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拓麻呂です。
2020年のNHK大河ドラマ『麒麟がくる』。
時代劇ということもあり、言葉や風習など、いまいちピンとこない部分もあるのではないでしょうか?
しかしながら、そういった部分が腑に落ちた方が、ドラマを何倍も楽しく視聴できるのは間違いありません。
ということで、この記事では麒麟がくるをより楽しむための豆知識をお届けします。
今回取り上げるのは、主人公の名前に関してです。
主人公は明智光秀ですが、彼の名前が『明智十兵衛光秀』となっていますよね。
さらにドラマ内では『十兵衛』と呼ばれていたりもしますね。
この『十兵衛』とは、一体どういう意味を持つ呼称なのでしょうか?
これには、日本に古くから伝わる風習、そして現代人も何気なく使っている呼称と、同じような意味が隠されているのです。
『十兵衛』が持つ意味とは?
名前の法則
現在の日本人の名前は『名字(苗字)』と『名前』で構成されていますね。
例えば『佐藤太郎』さんという人であれば、『佐藤』が名字で『太郎』が名前です。
明智光秀であれば『明智』が名字で『光秀』が名前です。
ですが、麒麟がくるでは『明智十兵衛光秀』と名乗っています。
この『十兵衛』とは一体なんなのでしょうか?
実は明治維新より前には『通称』というものが存在しています。
あるいは『仮名(けみょう)』とも言います。
この『通称』あるいは『仮名』にあたるものが『十兵衛』です。
つまり『名字(明智)』+『通称(十兵衛)』+『名前(光秀)』で構成されているわけですね。
せっかくなので、他の人物も見てみることにしましょう。
例えば『黒田官兵衛』であれば、『黒田』が名字、『官兵衛』は通称です。
そして、名前は『孝高(よしたか)』です。
官兵衛の場合は、名前よりも通称の方が有名です。
例えば、竹中半兵衛の『半兵衛』、山本勘助の『勘助』、山中鹿介の『鹿介』、島左近の『左近』、後藤又兵衛の『又兵衛』などは、全て通称です。
彼らの名前を『名字』+『通称』+『名前』で表記すると以下のようになります。
黒田 官兵衛 孝高(くろだ かんべえ よしたか)
竹中 半兵衛 重治(たけなか はんべえ しげはる)
山本 勘助 晴幸(やまもと かんすけ はるゆき)
山中 鹿介 幸盛(やまなか しかのすけ ゆきもり)
島 左近 清興(しま さこん きよおき)
後藤 又兵衛 基次(ごとう またべえ もとつぐ)
ということになります。
あるいは、幕末の坂本龍馬の『龍馬』や、土方歳三の『歳三』も通称です。
ちなみに龍馬は『坂本龍馬直柔(さかもと りょうま なおなり)』で、土方は『土方歳三義豊(ひじかた としぞう よしとよ)』です。
ここまで挙げた人物は、通称の方が有名な人物です。
では、例えばの織田信長の『信長』とか、伊達政宗の『政宗』、前田利家の『利家』などは通称なのでしょうか?
実は違います。
『信長』や『政宗』などは名前で、通称は別にあります。
彼らを『名字』+『通称』+『名前』で表記すると以下のようになります。
織田 三郎 信長(おだ さぶろう のぶなが)
伊達 藤次郎 政宗(だて とうじろう まさむね)
前田 又左衞門 利家(まえだ またざえもん としいえ)
となります。
このように歴史上の人物には、通称の方がが有名な人物と、名前の方が有名な人物が混同されています。
一見、名前なのか通称なのかが分かりづらいのですが、慣れてくると何となく雰囲気でわかるようになります。
ともかくも、昔の人の名は『名字』+『通称』+『名前』で構成されているのです
なぜ『通称』が使われているのか?
ところで、なぜ昔は通称なるものが存在していたのでしょうか。
これにも、明確な理由があります。
現在でいうところの、いわゆる下の名前は、正確には『諱(いみな)』と言います。
そして『諱(いみな)』は『忌み名(いみな)』とも表記されます。
『忌』という文字には『忌まわしい』という意味があり、『忌み嫌う』などという言葉でも使われる通り、あまり良い漢字ではありません。
つまり『諱(忌み名)』は、忌み嫌う名であり、口に出したりするのは不吉だとされていたのです。
もちろん、誰かを『諱(忌み名)』で呼ぶのは、たいへん失礼な行為です。
ゆえに、通称が存在していたのです。
現在でこそ『織田信長』とか『伊達政宗』とか、『名字』+『名前』で普通に読んでいますが、当時としてはあり得ないことだったのです。
なので、ドラマなんかで『信長様』とか『秀吉様』とか呼んでいたらそれは誤りですし、そんな呼び方をしたら首が飛びます。
また『名字』+『通称』+『名前』の法則は、『名字』+『役職名or官位』+『名前』となる場合もあります。
織田 上総介 信長(おだ かずさのすけ のぶなが)
羽柴 筑前守 秀吉(はしば ちくぜんのかみ ひでよし)
などが、その例に当てはまります。
ドラマなんかでも『筑前殿』と呼ばれていたりしますが、それは官位で呼ばれているということなのです。
この場合も、やはり諱で呼ぶことはありません。
ちなみに、光秀は『日向守(ひゅうがのかみ)』だったので、『明智日向守光秀』となります。
無意識に使っている通称と諱の名残
このように、昔は名字と名前の間に、通称や官位があり、『忌み名』で呼ぶことはほとんどありませんでした。
これは昔の風習で、現在には関係のないことかと思われるかもしれませんが、そんなことはありません。
実は、現代人の生活の中にも、その名残が色濃く溶け込んでいるのです。
例えば、初対面の人や、あまり親しくない人を、いきなり下の名前で呼んだりすることはありませんよね。
下の名前、つまり諱で呼ぶのは、かなり親しい間柄になってからです。
これは、いきなり下の名前で呼ぶのは失礼にあたるという風習が、日本人には無意識のうちに刷り込まれているからです。
また、会社の社長を『○○さん』とは呼ばないですよね。
高橋という名字の社長さんがいたとしたら、『高橋社長』とか、単に『社長』と呼ぶと思います。
社長に対して『高橋さん』と呼ぶのって、なんとなく呼びづらくて失礼にあたる気がしませんか。
社長だけでなく、専務や部長など、職場の役職者や重役は、ほとんどの場合『名字』+『役職』で呼ぶのも、古くからの名残なのです。
まとめ
以上、明智十兵衛光秀の『十兵衛』についてでした。
こういった何気ない部分の豆知識を知っているかいないかでも、ドラマへの理解度は変わってくるものです。
また、雑学や教養と言った意味でも役に立ちます。
ぜひとも豆知識とともに、より楽しく麒麟がくるを楽しんで頂ければと思います。
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では、今回はこの辺で!
ありがとうございました。