枕草子を代表するエピソード『香炉峰の雪』。
そんな香炉峰の雪が書かれている章段が、二九九段『雪のいと高う降りたるを』です。
今回は、清少納言の機転が記されたエピソードの原文と現代語をご紹介します。
※枕草子の章段には諸説あることをご了承ください。
現代版枕草子 299話 ~香炉峰の雪~
(外は)雪がとても高く降り積もっているのに(今日は大変冷え込んでいたので)いつもと違い、御格子をおろしたまま炭櫃に火をおこし、女房たちが大勢集まって話をしていると中宮定子様が、
「少納言、香炉峰の雪はどんなでしょうか?」
と、私におっしゃられたので、(女官に)御格子をあげさせ、私が御簾を高く上げたところ、中宮様は満足気にお笑いになる。
周囲にいた女房たちも
「白楽天の漢詩は皆知っていて歌ったりするけれど、実際に目の前に演出して見せるとは思いもよらなかった。やっぱり(清少納言は)中宮様にお仕えするのに相応しい人物のようだ」
と言う。
枕草子 二九九段の個人的解釈
この「香炉峰の雪」と言われる有名な章段は、清少納言が定子の意図を汲み取り機転を利かせた事で、定子や周りの女房たちに関心されたと言う内容になっています。
なおこの章段ですが、定子の言葉の裏にある意図や、枕草子執筆の動機などが分かっていないと、清少納言の単なる自慢話にしか読めません。ここには注意が必要です。
個人的に感じるのですが、この章段は原文をそのまま訳すと、ちょっと言葉足らずなんですよね。
と言うのも、定子の「少納言よ、香炉峰の雪、いかならむ」という言葉の背景には、中国の白居易(白楽天)の漢詩が想定されているのですが、作中ではそのことには触れていません。
しかしながら、章段の最後の辺りで女房たちが、『白楽天の漢詩は皆知っていて口ずさんでいる(歌っている)』と言っているので、この当時はあえて文中で説明しなくても大丈夫なくらい、皆知っていた事だったのかもしれません。
なお、香炉峰の雪の詳細な内容、解説はこちらをご覧ください。
白楽天の解説や、この章段に込めた清少納言の本当の想いについて記事にしていますので、理解がより深まる事と思います。
そして、もっと枕草子の世界を覗いてみたい方は、こちらからお好みの記事をご覧ください。
では、今回はこの辺で!ありがとうございました。
枕草子 二九九段『雪のいと高う降りたるを』の原文は、この後に書いてます。
【原文】 枕草子 二九九段『雪のいと高う降りたるを』
雪のいと高う降りたるを、例ならず御格子まゐりて、炭櫃に火おこして、物語などして集りさぶらうに、
「少納言よ、香炉峰の雪、いかならむ」
と、おほせらるれば、御格子上げさせて、御簾を高く上げたれば、笑はせたまふ。
人々も「さることは知り、歌などにさへ歌へど、思ひこそ寄らざりつれ。なほ、この宮の人には、さべきなめり」と言ふ。