『ザリガニの鳴くところ』ネタバレなしで感想レビューとおすすめポイント

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書評・レビュー

ザリガニの鳴くところをネタバレなしでレビューします。

 

本書のポイントをお伝えすると・・・。

ザリガニの鳴くところのポイント
先が気になる展開、主人公を応援したくなる展開、そして美しい自然の描写などに引き込まれ、一気読みできた素晴らしい作品

でした。

 

この記事では、ザリガニの鳴くところの大まかな展開や見所、オススメできる人できない人、作品の特徴など、ネタバレを避けつつご紹介していきます。これから読んでみようか悩んでいる方は、ぜひ参考になさってください。

 

※本記事は物語の本筋には極力触れないようにしていますが、ネタバレになるかならないかの線引きは個々の感覚に左右されます。また、作品の魅力を伝える都合上、どうしても内容には軽く触れざるを得ない箇所もあります。もし些細なネタバレも見たくないと言う方は、自己責任の上読み進めて頂けると幸いです。

 

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書籍データ

書名:ザリガニの鳴くところ(原題:Where the Crawdads Sing)

著者:ディーリア・オーエンズさん
翻訳:友廣純さん

項数:511ページ(単行本)

ジャンル:ミステリー(恋愛要素あり)

受賞:2021年 本屋大賞翻訳小説部門 第1位、みんなのつぶやき文学賞 海外編 第1位、キノベス!2021 第2位

【あらすじ】(「BOOK」データベースより引用)
ノース・カロライナ州の湿地で男の死体が発見された。人々は「湿地の少女」に疑いの目を向ける。6歳で家族に見捨てられたときから、カイアは湿地の小屋でたったひとり生きなければならなかった。読み書きを教えてくれた少年テイトに恋心を抱くが、彼は大学進学のため彼女のもとを去ってゆく。以来、村の人々に「湿地の少女」と呼ばれ蔑まれながらも、彼女は生き物が自然のままに生きる「ザリガニの鳴くところ」へと思いをはせて静かに暮らしていた。しかしあるとき、村の裕福な青年チェイスが彼女に近づく…みずみずしい自然に抱かれて生きる少女の成長と不審死事件が絡み合い、思いもよらぬ結末へと物語が動き出す。

【筆者の所感】

【簡単なあらすじ】

本書の主人公は、湿地の小屋で暮らす少女「カイア」。貧しい家庭に生まれたカイアは6歳で家族と離れ離れになり、たった一人で生きていかなければならなくなります。いつも裸足で文字も読めず、数字も29までしか数えられないカイアを村の人々は「湿地の少女」と呼び蔑んでいました。

 

そんなカイアは差別を受け傷つきながらも一人で生きぬき、やがて思春期を迎えて恋を経験します。そして自然と共に生きてきたカイアは大人になり・・・

 

とある不審死事件とカイアの関係が疑われ始めます。事件の真相とは?そして真犯人とは?

不審死事件と事件の真相とカイアの成長を描くベストセラーです。

 

こんな人にオススメ

「ザリガニの鳴くところ」をおすすめしたい方を3つのポイントに絞ってお伝えします。

3つのポイント
  • 少女の成長物語を応援したい
  • 〇〇〇〇〇〇がいることの〇〇〇〇〇を感じたい
  • 自然を感じたい

 

おすすめ① 少女の成長物語を応援したい

簡単なあらすじでも触れた通り、「ザリガニの鳴くところ」はカイアの少女時代から青春時代、そして成人して数年経ったくらいまでの波乱万丈な人生が主なストーリーとなります。

 

とても弱い立場だった一人の少女が、どのような経験をし大人へと成長していくのか?「がんばれ!カイア!!」「つらかったねカイア・・」といった感じで、気が付けばずっとカイアを応援しながら読んでいました。

 

カイアの心の揺れや頑張りに共感さえできれば、一気読み必至の面白さがありますよ。

 

おすすめ② 〇〇〇〇〇〇がいることの〇〇〇〇〇を感じたい

おすすめ②ですが、そのまま書いてしまうと少しだけネタバレになりそうなので伏字にしています。もし○○の部分が気になる場合は、下の空白をドラッグしてみてください。

おすすめ② 信じられる人がいることの素晴らしさを感じたい

あらすじにもある通り、本書ではカイアに殺人の容疑がかけられてしまいます。

カイアは多くの人たちから差別を受け、そして裏切られてきました。すっと一人ぼっちで生きてきました。そんなカイアですから裁判でも圧倒的に不利な状況・・・傍聴席にはカイアの有罪判決を心待ちにしてる人たちが集まっています。

この裁判の様子、かなり緊迫感溢れる描写になっていてハラハラしながら読んでいました。

 

果たして裁判はどのようにして進んでいくのか?そしてカイアにくだされた判決は?裁判の後、カイアはどうなってしまうのか?ぜひご自身の目で確かめてみてください!

 

おすすめ③ 自然を感じたい

本書の主人公カイアは湿地で生活しているので、必然的に雄大な自然が物語の舞台となります。ゆえに、カイアを取り巻く自然の描写がかなり多く描かれています。また、著者は動物学者でもあるらしく、湿地に生きる動植物の姿、また湿地の近くには海もあり、脳内に雄大な自然が広がる情景描写は圧巻の一言。

 

さらには、巻頭の方に舞台となる湿地の地図が載っているので、カイアの行動範囲を把握しやすくなっています。

 

オススメできないケース

個人的には「ザリガニの鳴くところ」はとても素晴らしい作品だと感じましたが、必ずしも万人受けはしないかもしれません。特に以下の2つに当てはまる場合は、あまりオススメできないケースとなります。

  1. 明るく爽やかな物語が読みたい
  2. 長編小説を読んだことが無い

 

主人公のカイアは基本的に不憫な境遇にあり、人目を忍んで生活しているので、作品全体の雰囲気はあまり明るくありません。爽やかな作風を求めている方、明るい物語が読みたい方にはあまり向かない作品だと感じました。

また、ページ数が500ページを超えていることと、読みやすいとは言え翻訳本なので、あまり読書に慣れていない方、長編小説を読んだことのない方は、二冊目以降にチャレンジするのがオススメかなと思います。

 

ザリガニの鳴くところ 3つの特徴

「ザリガニの鳴くところ」で特に特徴的な部分を3つにに絞ってご紹介します。

3つの特徴
  • 2つの時系列で進む物語
  • 現代にも通じる社会問題
  • ミステリー要素あり!恋愛要素あり!成長物語あり

 

特徴① 2つの時系列で進む物語

本書は、現在と過去の2つの時間軸で物語が進行していきます。

  • ひとつは、とある殺人事件が起こり、カイアに疑いの目が向けらていく現在の物語
  • ひとつは、カイアが6歳の時、母親と離れ離れになる過去のシーンから始まる過去の物語

 

この2つの時間軸が交互に展開されながら物語は進み、過去のカイアが成長していくにつれ徐々に現在へと近づいていきます。そして、最終的には2つの時間軸がひとつにまとまるのです。

このような流れなので、カイアどのような経験をして現在にいたるのか?どのような経過を辿って(状況証拠が見つかり)カイアに殺人の容疑がかけられたのか?が把握しやすいうえ、カイアに感情移入しやすくなっています。

 

過去と現代が交互で展開しつつも、各章が先の気になる終わり方をするので、個人的にはページをめくる手が止まらなくなりました。

 

特徴② 現代にも通じる社会問題

何度か触れていますが、本書は「湿地の少女」と蔑まれ続けたカイアの物語です。ゆえに、いわゆる差別問題に関する描写も決して少なくありません。カイアに対する差別だけでなく、カイアの味方になってくれた黒人夫婦が差別されるシーンも描かれています。1950~60年代頃のアメリカの差別問題がリアルに感じられる作品だと感じました。なので、作品全体の雰囲気としては、あまり明るい感じではありません。

 

現代にも深く根を下ろしている問題でもあると思うのですが、日本で暮らしているとあまり実感できない部分だったりします。だからこそ、当時のアメリカがどのような社会構造だったのかを知る良いキッカケにもなる作品だなと感じました。

 

特徴③ ミステリー要素あり!恋愛要素あり!成長物語あり

本書のジャンルは「ミステリー」にカテゴライズされているようですが、単なるミステリーというわけでもなく、カイアの成長物語であったり、カイアの恋愛物語といった要素も見逃せません。

本書が2つの時間軸で進行することはすでにお伝えしましたが、あえて言うなら「現在軸の内容がミステリー」で、「過去軸の内容がカイアの成長物語+恋愛物語」といった感じですね。

 

さらにページ数も500ページくらいあるので、結構な読み応えがあります。

 

「ザリガニの鳴くところ」感想

読後感は良い?悪い?

本書を読み終えた後、僕は素敵な余韻に浸ることができました。ですが、読後感は読み手によって賛否別れるような気もします。ネタバレになるので詳述はしませんが、カイアの行動をどう受け止めるかで、良くも悪くもなる読後感なのかなと感じます。

 

感動する作品かどうか?

主人公のカイアを好きになれるかどうか?が感動できるかどうかの最も大きなポイントになるかと思います。子供の成長物語が好きな方であれば、きっと感動できるでしょう。カイアを応援しながら読み進めれば、終盤に胸が熱くなるポイントは必ずあります。

 

翻訳の読みやすさは?

本書は海外文学です。海外の作品は翻訳次第で物凄く読みにくい場合があるのですが、本書は普通に読めるのでご安心ください。海外文学独特の表現を感じる部分も少しありましたが、内容が頭に入ってこないとかは無かったので、普通に読書経験がある方なら問題なく物語の世界に入り込めるでしょう。

 

登場人物の魅力はある?

これまでにも触れた通り、カイアを応援しながら読んでいたので、主人公カイアのキャラクター性にはとても魅力を感じました。なんですが、カイアは人目を忍んで湿地で暮らしている為、決して明るい人物ではありません。なので好き嫌いは分かれそうです。また、カイアの味方になってくれるジャンピン&メイベル夫妻も温かくて素敵な人物たちでした。

 

一方、カイアと相対する人物は、カイアを応援していればしているほど逆に憎たらしく思うので、良くも悪くもキャラの魅力は際立っていると言えるでしょう。

なお、巻頭に主な登場人物が一覧になっていますので、誰が誰だかわからなくなっても安心です。

 

ラストの意外性は?

終盤で「えっ!?」と感じた箇所は2つありました。ひとつは全く読めなかったです。もうひとつは、読後感にも関わる部分かなと思います。ぜひご自身の目で確かめてみてください。

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総評とまとめ

たびたび触れた通り、本書で僕がもっとも夢中になったのはカイアの成長物語、つまりカイアがどのように成長していくのか?という部分です。カイアの成長を見てきたからこそ、カイアに殺人の疑いがかけられたシーンは手に汗握る展開でした。

 

幼少期に一人ぼっちになってしまい、貧しくてボロボロの小屋に住み、いつも裸足で、字も読めず、数字も29までしか数えられず、貝を採って生計を立てていた幼いカイアが、どのような人生を歩み、最後はどのような結末を迎えるのか?そして、殺人の真犯人は本当にカイアだったのか?

「負けるなカイア・・・」と想いながら読んでいたため、ページをめくる手が止まらず一気読みしてしまいました。

 

その他にも、感動あり、ハラハラドキドキあり、結末の驚きもありなので、小説の面白い部分を詰め込んだような作品という印象です。

多くの方にオススメできる作品ですので、読書好きで未読の方はぜひ読んでみてください。