「むらさきのスカートの女」ネタバレなし感想レビュー!不気味で怖い奇妙な物語

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書評・レビュー

この記事では「むらさきのスカートの女」を、ネタバレなしでレビューしていきたいと思います。

本書のポイントをサクッとお伝えすると・・・。

むらさきのスカートの女のポイント
作中で常に漂う妙な違和感と不気味さ。読み進めるうちに徐々に感じ始める異様さと滑稽さ

 

この記事では、これから「むらさきのスカートの女」を読んでみようか悩んでいる方向けに、

・オススメできる人できない人
・大まかな展開や見所
・作品の特徴

などネタバレを避けつつご紹介していきます。

 

本記事を読み終わる際に、あなたが本書を手にするかどうかの指針になれば幸いです。

筆者的には大好きな作品です。

 

※本記事では、物語の核心に触れるようなネタバレはしていませんが、できるだけ事前情報が無い状態で作品を読みたい方は、自己責任の上、本記事を読み進めて頂くようお願い致します。

 

書名:むらさきのスカートの女

著者:今村夏子さん

項数:160ページ(単行本)

受賞:第161回 芥川賞受賞

【あらすじ】(「BOOK」データベースより引用)
近所に住む「むらさきのスカートの女」と呼ばれる女性のことが、気になって仕方のない“わたし”は、彼女と「ともだち」になるために、自分と同じ職場で彼女が働きだすよう誘導する。

【筆者の所感】

「むらさきのスカートの女」の近所に住んでいる「私」。

本書は「私」の視点で描かれる「むらさきのスカートの女」の観察記録のような内容になっており、「むらさきのスカートの女」の日常が淡々と進んでいきます。

近所では有名人のむらさきのスカートの女、そんなむらさきのスカートの女と友達になりたい「私」こと「黄色いカーディガンの女」

 

何となく気味の悪い雰囲気を醸し出すの「むらさきのスカートの女」・・・そして、そんなむらさきのスカートの女を観察し続ける「黄色いカーディガンの女」・・・

読み進めていく内に、徐々に感じ始める違和感と滑稽さ、そして異様な不気味さ・・・非常に独特な雰囲気を漂わせるオススメ作品です。

 

こんな人にオススメ

「むらさきのスカートの女」をおすすめしたい方を3つのポイントに絞ってお伝えします。

あなたにおすすめしたい3つのポイント
  • 他の作品ではあまり得られない独特な不気味さを味わいたい
  • 滑稽な描写を楽しいみたい
  • 短時間でサラっと読める作品を求めている

 

おすすめ① 独特な不気味さを味わいたい

「独特な不気味さを味わいたい方」へのオススメ度★★★★★

「むらさきのスカートの女」の最も大きな魅力は「本書ならではの不気味さ」にあると感じます。

感動や興奮、驚きなどを味わえる作品は多いですが、本書はそれらとは全く違ったベクトルで楽しませてくれる作品です。

 

「むらさきのスカートの女」と「黄色いカーディガンの女」が醸し出す、なんか不思議な状況や不気味な雰囲気が個人的にはとても楽しめました。

伝え方が難しいのですが、むらさきのスカートの女だけではなく、本書の語り手である「私(黄色いカーディガンの女)」にも注目して読み進めていただきたいです。

 

人によっては恐怖や狂気を感じる場合もあるかもしれません。

あえて例えるとするならば・・・・雰囲気は違いますが、感覚的には村田沙耶香さんの「コンビニ人間」が近いと思います。

 

なお、不気味といっても、いわゆる霊的な感じとか残酷描写があるわけではないです。なのでそういったジャンルが苦手な方でも問題なく読めるので安心してください。

 

おすすめ② 滑稽な描写を楽しみたい方

「滑稽な描写を楽しみたい方」へのオススメ度 ★★★☆☆

ここまで散々不気味さを強調してきましたが、一方で語り手である「私(黄色いカーディガンの女)」が持つ滑稽さも、本書の大きな魅力の一つと感じます。

 

むらさきのスカートの女と友達になるために「私(黄色いカーディガンの女)」は様々な行動に出るわけですが、それらの行動が妙に滑稽で、ちょっと笑える描写がいくつかありました。

読んでいる中で「この人は何をしてるんだ!?」と思うような描写がり、そういった滑稽さも本書の大きな魅力だと感じました。

 

もしかしたら、人によっては不気味さよりも「笑える」といった部分の方が勝るかもしれません。

読み手によって印象が大きく分かれる作品だと感じます。

 

とは言え、筆者的にはその滑稽さも不気味さに拍車をかけていると感じなくもないのですが・・・。

 

おすすめ③ サラっと読める作品を求めている

「サラっと読める作品を求めている」へのオススメ度 ★★★★★

本書は単行本で150ページちょいしかなく、1ページあたりの文字数も少なめなので、あっという間に読めてしまいます。

スキマ時間で少しずつ読み進めるだけでも、さほど日数や時間をかけずに読了できると思うので、サラっと読みたい方には特におすすめできる作品です。

 

内容的にも、好きな人は好きな作風なので一気読みしてしまう方も多いのではないでしょうか。筆者も2時間くらいで一気読みでした。

 

ただ、時間的にはサラっとは読めますが、内容はサラっとしていないです。

 

オススメできないケース

おすすめできないケースは以下の2点です。

  • 感動や興奮など、心を揺さぶられる作品を求めている方
  • ボリューム満点の長編を求めている方

あくまで「私(黄色いカーディガンの女)」が直接その目で見たむらさきのスカートの女の日常風景、あるいは「私」が知って入るむらさきのスカートの女に関する情報が淡々と語られていく、といったスタイルなので、大きく感情を揺さぶられるような展開はほとんどありません。

なので、感動や興奮、驚きなどの熱くなるような展開を求める場合には不向きだと思われます。

あるいは、人によっては「怖い」という感情を抱く場合はあるかもしれません。そういった意味でも、爽やかな展開や読後感ではないのでご注意ください。

 

また、すでにふれた通り本書は単行本で150ページくらいの薄めの本なので、長編小説が好きな方やガッツリとした読み応えを求めている場合にもオススメはしづらいかなと感じました。

 

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むらさきのスカートの女の総評とまとめ

以上、「むらさきのスカートの女」のネタバレなしデビューでした。

 

筆者としては、本書のどこか滑稽で不気味な雰囲気がとても楽しかったです。

主な登場人物である「むらさきのスカートの女」と「黄色いカーディガンの女」のキャラクターも個性的で面白かったですし、近年読んだ小説の中ではかなり上位にランクインする作品でした。

 

好き嫌いが別れそうな作品・・・というか読み手によって印象が大きく分かれる作品かと思います。もし気になる方がいらっしゃったら、ぜひ一度読んでみてください。個人的にはとてもおすすめてす!

 

以下、閲覧注意!!

最後に本書について筆者がとくに不気味に感じたことをお伝えしますが、ほんの少しだけネタバレになっています。ネタバレしたくない方は、ここでブラウザバックをお願いします。

ネタバレしたくない方はここから先は読まないでください

本書のタイトルにもなっている「むらさきのスカートの女」。タイトルにもなっているくらいですから、注目は「むらさきのスカートの女とは何者なのか?」というった観点で読み進めて行くことになります。

もちろん「むらさきのスカートの女」に対する興味も尽きずに読めるのですが・・・読み進めて行くうちに、妙な違和感を感じ始めるんですよね・・・。

 

この作品で最も注目すべき人物は、実はむらさきのスカートの女よりも、ずっと観察し続けている「私」、つまり「黄色いカーディガンの女」ですよね、きっと・・。

 

「私」の珍妙かつ異常な行動がいかにも狂気的で、この辺に不気味さ、滑稽さ、恐ろしさを感じたのは、多くのレビューで書かれていますし筆者も全く同感です。

ただ、筆者としてはもうひとつ気になったことがあるんですよね。

 

それは、「私(黄色いカーディガンの女)」の異常なまでの存在感の薄さです。これは「私(黄色いカーディガンの女)」のキャラが立っていないということではなく、「作中ではまるで存在していないかのように、周囲の人々に認知されていない」ということです。

 

つまり「私(黄色いカーディガンの女)」は、

  • むらさきのスカートの女をいつも付け回しているのに気づかれない
  • バスの中でむらさきのスカートの女の鼻をつまんでも気付かれない
  • 職場仲間にも全く相手にされていない
  • 遅刻、早退、無断欠勤の常習犯なのにバイトをクビにならない
  • 食い逃げしても気付かれない
  • 複数の人に100円玉をせびってもほとんど怪しまれない
  • お見舞いで病室にずっといたのに患者に話しかけるまで気付いてもらえない

という感じで、確かにそこに存在していて異常な行動をしているのだけれど、周囲の人々からはほとんど関心を持たれていないのです。

 

筆者的には、この存在感の薄さが「私(黄色いカーディガンの女)」の異常さをさらに際立たせているようで、非常に不気味に感じました。

 

ということで、最後までお読みいただきありがとうございました。