『天宇受賣命(アメノウズメノミコト)』。日本神話におけるお色気担当として知られる女神様です。
アメノウズメが登場する神話として有名なのが『岩戸隠れ』と『天孫降臨』の2つ。特に岩戸隠れでは物語のキーパーソンとなり、強烈な印象を見る者に与えてくれます。
そんなアメノウズメが岩戸隠れで見せた裸踊りには意外な真実が隠されています。
この記事では、アメノウズメの裸踊りの真実や、アメノウズメが活躍するお色気神話の簡単なあらずじなど、アメノウズメに関する情報をお届けします。
※この記事は、主に古事記の神話を参考にしています。
※当記事のイラストは全て筆者が作成したものです。
アメノウズメのプロフィール
まずはアメノウズメのプロフィールを見ていきましょう。
【神名】
天宇受賣命、天鈿女命など
【神格】
芸能の女神
【家族構成】
父:フトダマ、母:ヒリトメ、夫:サルタヒコ
【お祀りしている主な神社】
佐倍乃神社(宮城県)、志波姫神社(宮城県)、千代神社(滋賀県)など
【略伝】
『岩戸隠れ神話』において、引きこもってしまったアマテラスを岩屋から引っ張り出す際に、半裸になって踊りを披露した芸能の女神。この時に披露した踊りが、現在も神前で行われている神楽の原型とされています。また、『天孫降臨神話』でニニギと一緒に地上世界に降り立った五柱の神(五伴緒)の一柱でもあります。
アメノウズメのデータ
①登場頻度:★★★★☆☆
アメノウズメが主に登場するのは天岩戸神話と天孫降臨神話の2回。特に天岩戸神話では準主役級の活躍(半裸で踊り狂う)を見せているため、登場頻度の割には印象が強烈な女神です。
古事記ではアメノウズメが戦っている神話はありません。しかしながら天孫降臨にてニニギノミコトのお供に選出されているため、頼りになる存在ではあったと思われます。(詳しくは後述)
古事記の中で、アメノウズメの容貌に関しては特に触れらていません。しかしながら、天岩戸神話での踊りの一件があるため、ゲーム等の創作物、あるいは神様を紹介する書籍等では、如何せん官能的な姿で描かれやすい傾向があります。よって、どうしてもそちらの印象に引っ張られてしまういます。
④知名度:★★★★☆☆
有名な天岩戸神話でかなり目立った活躍(半裸で踊り狂う)をしているので、知名度は高めだと思わます。
⑤:踊りの上手さ:★★★★★★
天岩戸神話で踊り手に選ばれているので、踊りの華麗さは確かなものだったのでしょう。
天孫降臨の際、アマテラスらにその度胸を買われ、とある役目(詳しくは後述)を仰せつかっています。また、繰り返しになりますが、天岩戸神話での踊りの一件(半裸で踊り狂う)があるので八百万の神々の中でも度胸はピカイチであったと思われます。
天岩戸隠れ神話の簡単なあらすじ
では、岩戸隠れの神話をアメノウズメの活躍に絞ってサクッとお伝えします。
登場する神様は以下の通りです。
- アメノウズメ
- アマテラス
- スサノオ
荒々しい神様である『スサノオ』が、高天原(天上世界)で悪さをし過ぎたため、姉である『アマテラス』は嫌気がさして、天岩屋戸(あめのいわやと)という岩の洞窟の中に閉じこもってしまいました。
アマテラスもうやってられない!!
太陽神のアマテラスが洞窟に引きこもってしまたため、世界は真っ暗闇に包まれ多くの災いが起こるようになりました。
この事態を憂いた神々は、アマテラスを洞窟から出すために一計を案じます。
洞窟の前に集まった神々は宴を始め、大盛り上がり。
その最中、アメノウズメが桶をひっくり返してその上に乗り、踊りを披露し始めました。
アメノウズメ♪♪♪
ノリノリになってきたアメノウズメは服がはだけて胸が露わになり、さらには腰の紐をほどいて下半身も露出しながら熱狂的な踊りを披露したのです。
アメノウズメ♪♪♪
この限りなく全裸に近い半裸踊りを見た神々はさらに盛り上がり、いよいよ宴はどんちゃん騒ぎの様相を呈してきます。
外が妙に騒がしいと不審に思ったアマテラスは、洞窟の入り口を塞いでいた岩を少し開け、外の様子を覗いてみました。
アマテラス神々がこんなにも盛り上がって笑っているのは何故だろう?
アマテラスが顔を出したその瞬間、入り口の傍らで控えていた力持ちの神様がアマテラスの腕をつかみ、洞窟の外に引っ張り出したのです。
こうして世界に光が戻ったのでした。
以上が岩戸隠れ神話における、アメノウズメの大まかな活躍シーンです。
まるでスト〇ップ劇場のような状況ですが、アメノウズメのお色気ダンスで神々がどんちゃん騒ぎを起こした結果、アマテラスが洞窟から出てくるキッカケを作ったのでした。
なお、この踊りが、現在の巫女さんが神前で踊る『神楽舞』の原型だと言われています。
裸踊りの真相
このように、岩戸隠れの解決に重要な役割を果たしたアメノウズメ。しかし、ひとつだけ疑問に感じることがありませんか?
神話の一部を振り返ってみましょう。
太陽神のアマテラスが洞窟に引きこもってしまたため、世界は真っ暗闇に包まれ多くの災いが起こるようになりました。
よくよく考えてみればアマテラスが引きこもってしまったために、世界が真っ暗になっていて何も見えないような状態だったのでは?と思われます。
そのような中で披露した裸踊りを、神々は本当に見ることができたのでしょうか?
もしかしたら、ぼんやりとシルエットが見えていたり、火をつけていたりしたかもしれませんが、もしかしたら真っ暗でほとんど見えなかったのは?と、妙な疑問も感じてしまいますね。
あくまで神話なので、このような重箱の隅を突くような指摘は不要ではありますが、この件に関してはおそらく見えていなくても問題なかったと思われます。
というのも、どんちゃん騒ぎは偶然起こったことではなく、オモイカネノカミの神という知恵の神様の発案によって、アマテラスを引っ張り出すために意図的に行われたことだったからです。
アメノウズメが服を脱ぐことまで想定内していたのかはよくわかりませんが、もしかしたら暗闇で見えないとわかっていたからこそノリで裸になってしまったのかもしれませんね。
天孫降臨での活躍
アメノウズメが登場するもうひとつの神話が『天孫降臨』です。
天孫降臨を簡単に言うと、アマテラスの孫である『ニニギノミコト(以後ニニギ)』が、地上世界を統治するために天上世界から地上へ降り立つ物語です。
この時ニニギに同伴した五柱の神様がおり、その神様たちの総称を『五伴緒(いつとものお)』と言うのですが、その中の一柱がアメノウズメです。
天孫降臨の際、道中に見知らぬ神様がおり、その素性を探る任務を『度胸がある』という理由でアメノウズメが任されています。
確かに、岩戸隠れで裸体をさらけ出して派手に踊ると言うパフォーマンスをやってのけた神様ですから、度胸があったのは間違いないでしょう。
ともかくもアメノウズメが、
あなたは誰ですか?
と、道中にいた神様を問いただしたことろ、『サルタヒコ』という神様で、一行を道案内するために現れたのだということが判明し、そのまま地上世界へ向かうことになりました。
なお、この出来事がきっかけで、アメノウズメとサルタヒコは後に結婚しています。
なお日本書紀によると、サルタヒコの素性を探りに行ったアメノウズメは、またしても胸や下半身が露わになった状態だったそうです。
やはり、日本神話におけるお色気担当であることは間違いなさそうです。
アメノウズメ怒る!ナマコには口がある?
最後に、天孫降臨の後、少しだけアメノウズメが登場する謎の場面があるのでご紹介します。
天孫降臨の後、サルタヒコを故郷に送り届けたアメノウズメは、その道中でたくさんの魚を集めて、
アメノウズメあなたたちはニニギノミコトにお仕えしますか?
と問いました。
すると魚たちは、
魚はい。お仕えします!
と答えました。
しかしナマコだけは、
ナマコ・・・・・・・・・
無言のままだったため、アメノウズメは
アメノウズメこの口はなにも答えない口か?
といって、小刀でナマコの口を切り裂いてしまいました。
ゆえにナマコの口は裂けているのです。
いかがでしょうか?
ナマコの口を切るという謎の神話ですが、度胸のあるアメノウズメらしいエピソードという気もしますね。
ただ、裂けた口がナマコのどこにあるのかは謎です。
アメノウズメまとめ
以上、アメノウズメに関してでした。
神話の中にもちょいちょい登場するアメノウズメですが、その中でも最も印象深いのは、やはり岩戸隠れでの踊りではないかと思います。
この踊りが神楽舞の原型とされていますし、アメノウズメは『猿女君(さるめのきみ)』と言う宮中祭祀で舞を披露する芸能一族の祖神とされています。
暗闇とは言え、服をはだけて踊り狂う度胸と、周囲を盛り上げるスター性など、お色気担当だけでは納まりきらない、芸能の神としての風格を兼ね備えた女神様なのかなと感じますね。
日本神話は、アメノウズメ以外にも魅力的な神様たちで溢れかえっています。
ぜひ今まで以上に日本神話に触れて楽しんで頂ければと想います。
【参考にした主な書籍】