日本神話の中には『誓約(うけい)』という言葉が出てきます。現代ではあまり馴染みのない言葉ではありますが、実は現代人にもとても馴染みがある、とあることの起源なのです。
また、日本神話の中でも最も有名な『アマテラスの天の岩戸隠れ』、『スサノオのヤマタノオロチ退治』へと繋がる大事なお話です。
この記事では、
・アマテラスとスサノオの誓約の神話はどんな内容
・誓約は何の起源なの?
といった部分を中心にお伝えしていきます。
では行ってみましょう。
※この記事は、主に古事記の神話を参考にしています。
アマテラスとスサノオの誓約の神話
まずは、アマテラスとスサノオが『誓約(うけい)』をする場面を簡単に確認していきましょう。
主に登場する神様は
の三神です。
スサノオは父のイザナギに海原を治めるよう命じられます。ところがスサノオは泣いてばかりで、海を治める気配を見せません。スサノオが大泣きするたびに天変地異が起こり、災いが降り注ぎました。
見かねたイザナキはスサノオを問い正します。
イザナギなんでそんなに泣いてばかりいるのだ?
すると、スサノオはこう答えます。
スサノオ僕は亡き母(イザナミ)に会いたいのです。だから泣いているのです。
これを聞いたイザナギはお怒りになり、スサノオを高天原(神様の住む天上世界)から追い出してしまいました。
彼は高天原から立ち去る前に、姉であるアマテラスに挨拶しておこうと高天原に戻ってきました。
ところが、スサノオの心はたいそう荒ぶっていたので、歩くたびに山、川、大地が揺れ動きました。この事態に驚いたアマテラスは、スサノオが攻め込んでくるものと思い、完全武装し臨戦態勢で待ち受けます。
スサノオに対峙したアマテラスは問い正します。
アマテラス何しに来たのですか?
アマテラスは完全に戦闘態勢です。
そんなアマテラスに対し、スサノオはこう答えます。
スサノオ僕に邪心はありません。最後のご挨拶をと思い、こうして参上したのです。
しかし、アマテラスは信用しません。
アマテラスならば邪心のないことを証明してみせなさい!
スサノオでは、誓約でお互いに子を産んで証明しましょう。
こうしてアマテラスとスサノオの誓約が始まります。
アマテラスはスサノオが腰に帯びていた十拳剣(とつかのつるぎ)を抜き取り三つに打ち折り、口に入れ噛み砕きました。
そして口から霧のように吹き出したのです。
すると、その霧の中から三柱の女神が成りました。
続いてスサノオは、アマテラスが髪や腕に付けていた勾玉をもぎ取り、口に入れ噛み砕きました。
そして口から霧のように吹き出したのです。
するとその霧の中から五柱の男神が成ったのです。
誓約はお御籤(おみくじ)の起源
以上が、日本神話で語られるアマテラスとスサノオの誓約の場面です。
ですがこの神話だけだと、誓約とは結局なんだったのかよく分からないので、少し解説しますね。
簡単に言うと、誓約とは決められた通りの結果がでるかどうかの占いです。
現代で例えるなら、神社で馴染み深い『おみくじ』が誓約にあたります。
例えば初詣でおみくじで引いた時に大吉だったとします。これは、今年一年いい年になるのではなく、現在進行形で良い運勢が巡ってきているから大吉を引くべくして引いたのです。
つまり、おみくじとは大吉であれ凶であれ、最初から何を引くか決まっているのです。
これが誓約の考え方であり、おみくじの本質です。
つまり、アマテラスとスサノオの誓約とは、スサノオに邪心が無いかないなら最初から良い結果が出るはずだと言う前提に立って行われたものなのです。
では、結局スサノオに邪心があったのかどうか、その結末を確認していきましょう。
誓約の結果はどうなったのか?
実は、この結果は少々うやむやな感じになっているのですが、一応スサノオには邪心がなかったことになっています。
スサノオが噴き出した霧から三柱の女神が誕生したこそから、
自分の心が清いから女神様が生まれたんだ。だから僕の勝ちだ!
ということになっています。
よくわからない言い分なのですが、ともかくもスサノオは勝利し邪心の無いことが証明されました。
この勝利に気分を良くしたスサノオは、調子にのって田んぼの畔を破壊し、神聖なるご殿に糞をまき散らすなどの暴挙に及びました。
この行為に対し、アマテラスも最初は寛容な態度を示していました。
ところがスサノオは、アマテラスが営む機織り小屋の天井に穴を開け、屋根の上から皮を剥いだ馬を投げ入れたため、落っこちてきた馬に驚きすぎて、小屋にいた女神が亡くなってしまいました。
この行為には、さすがのアマテラスも堪忍袋の緒が切れました。
完全にスネてしまった彼女は、天岩戸という洞窟に引きこもってしまったのです。
こうして物語はアマテラスの岩戸隠れ神話へと突入していくことになるのでした。
誓約のまとめ
以上、アマテラスとスサノオの誓約に関してでした。
『誓約(うけい)』とは、決められた通りの結果がでるかどうかの占いであり、現在ではお御籤(おみくじ)がそれに相当します。
なので、初もうでのおみくじで大吉を引いた場合、その年に良いことが起こるというよりは、今まさに運気が良い真っただ中にある、という意味合いになるんですね。
この他にも、日本神話は魅力的な神様たちで溢れかえっています。ぜひ今まで以上に日本神話に触れて楽しんで頂ければと想います。
【参考にした主な書籍】