日本神話の中でも人気の建速須佐之男命(以下スサノオ)。
ゲームなどにも度々登場するので、名前は知っていると言う方も多いのではないでしょうか?
スサノオは海原を支配する神様として、極めて荒々しい気性を持った神様です。
この記事では、そんなスサノオがどんな活躍をした神様なのかを、家系図やデータを元にわかりやすく解説していきます。
スサノオのプロフィール
まずはスサノオのプロフィールを見ていきましょう。
【神名】
建速須佐之男命、素戔男尊など
【神格】
海原の神、暴風の神
【家族構成】
父:イザナギ、母:イザナミ?、姉:アマテラス、兄:ツクヨミ、子:宗像三神、スセリビメなど
【お祀りしている主な神社】
熊野大社(島根県)、氷川神社(埼玉県)、八坂神社(京都府)など
【略伝】
ヤマタノオロチ退治の神話で有名な神様。荒れすさぶる神として、非常に荒々しい神格を持っています。姉のアマテラス、兄のツクヨミ、そしてスサノオの三柱の神様を総称して「三貴子」と呼びます。乱暴者の側面を持っているため悪神としてのイメージも強いですが、一方でヤマタノオロチを退治するなど英雄としての一面も持つ、非常に人気のある神様です。
「アマテラスとの誓約」「ヤマタノオロチ退治」「オオクニヌシの試練」など、数多くの神話に登場します。
ヤマタノオロチを退治しているので戦闘力は高そうですが、実は真正面からぶつかり合ったわけではないため★4つ(詳しくは後述)
スサノオの容姿を直接的に示す神話はなく、推測できる描写も無いため、真ん中の★3つとしました。
「ヤマタノオロチ退治」の神話自体が有名なのに加え、ゲームなどにも頻繁に登場するので、神話の内容は知らなくとも名前くらいは聞いたことがある方が多いのではないでしょうか。
巧みな?策略を用い、ヤマタノオロチを撃破しているので星5つです。
心が荒ぶったスサノオが歩くと地表が大きく揺れ動き、泣きわめくと木々が枯れ、川も干上がるほどです。また、宮殿に糞をまき散らしたり、皮を剥いだ馬を屋根から落とすなどの悪さをした正に乱暴者です。
スサノオの家系図
続いてスサノオの系図をご覧ください。
スサノオから見て、アマテラスは姉、ツクヨミは兄にあたります。
親に関しては、父親はイザナギで間違いありません。
一方、母親はイザナミと考えられますが、解釈の仕方によっては難しいところがあります。
古事記の記述だけを見る限り、スサノオはイザナギとイザナミの交わりから生まれたのではなく、イザナギが一人で鼻を洗った時に誕生しているためです。
詳しくは後述しますが、スサノオ自身が「母親=イザナミ」と認識していたようなので、一応は「母親=イザナミ」という認識でも良いのかなと個人的には考えています。
スサノオの主な神話
それでは、以下よりスサノオの登場する主な神話をご紹介していきます。
三貴子誕生
まずは、スサノオ初登場の場面から見て行きましょう。
スサノオが登場するのは、イザナギが黄泉国から帰ってきて禊をした場面です。
死者の国である黄泉国に行ったことで、イザナギは穢れてしまったため、身を清める為に禊を行いました。
この禊で、イザナギが左目を洗った時に誕生したのがアマテラス、右目を洗った時に誕生したのがツクヨミ、そして鼻を洗った時に誕生したのがスサノオでした。
アマテラス、ツクヨミ、スサノオの三柱の神様は、「貴い子」という意味で「三貴子」と呼ばれています。
イザナギはたいそう喜び、
アマテラスは高天原(※)を、ツクヨミは夜の世界を、スサノオは大海原を、それぞれ治めなさい。
と三貴子に命じました。
※アマテラスが治める高天原(たかまがはら/たかまのはら)とは、神様が暮らす天上世界のことです。
以上が古事記におけるスサノオの初出の逸話になります。
追放されるスサノオ
イザナギから海原を治めるように命ぜられたスサノオ。
しかし、スサノオは泣いてばかりいて、海原を全く治めようとしませんでした。
スサノオが泣くと山の木々は枯れてしまい、海や川の水も干上がる始末。
イザナギはスサノオに問います。
どうして泣いてばかりいるのだ??
するとスサノオはこう答えました。
僕は母のいる根堅州国に行きたいのです。
スサノオが言っている「母」とはイザナミのことで、根堅州国とは諸説あるものの「黄泉国」のことだと考えられています。
要するに、母のイザナミが恋しくて泣いていたわけですね。
泣き喚いてばかりで全然海原を治めようとしないスサノオは、結局、高天原を追放されてしまいました。
アマテラスとの誓約
スサノオは追放されたことをアマテラスへ報告しに行きます。
ところがアマテラスは、
スサノオは何か悪いことをたくらんでいるのかもしれない。
と勘違いし、臨戦態勢で待ち受けていました。
スサノオと対峙したアマテラスは、スサノオに邪心がないことを証明させようとします。
あなたに邪心がないどうか、証明してみせないさい。
ならば誓約で私に邪心が無いことを証明してみせましょう。
こうしてアマテラスとスサノオは誓約を行い、スサノオは自らに邪心が無いことが証明でき、調子に乗って宮殿に糞をまき散らしたり、田んぼの畔を破壊するなど、とんでもない行動にでてしまいます。
結果、エスカレートしたスサノオの悪行に嫌気がさしたアマテラスは、天の岩屋戸へ引きこもってしまったのです。
この後に展開される神話が、有名な「岩戸隠れ」のお話になります。
なお、アマテラスとスサノオの間で行われた「誓約」に関しての詳細は、長くなるため別の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧になってみてください。
実は、現代人にも身近なあるものの起源が誓約だったのです。
尻から大豆を出したオオゲツヒメを・・・
高天原を追放されたスサノオは、地上世界へ赴く途中、これまでの罪滅ぼしの為、神々に食べ物をお供えしようと考え、食べ物の神様である「オオゲツヒメ」の元を訪れます。
オオゲツヒメはスサノオの為に、たくさんの小豆や大豆などの食べ物を提供します。
しかし、その食べ物の出し方が良くありませんでした。
オオゲツヒメの耳の穴や鼻の穴、しまいには尻の穴などから、食べ物を出してきたのです。
これにはさすがのスサノオも、
なんと汚らわしい!
と怒り心頭で、オオゲツヒメを殺害してしまいました。
すると、オオゲツヒメの遺体からは、たくさんの食べ物が生えてきたのです。
実はこのエピソードは、食べ物の起源を示唆しており、自然の循環を暗示するとても大切神話となっています。
詳しくはコチラの記事で解説していますので、ぜひご覧になってみてください。
ヤマタノオロチ退治
紆余曲折あったものの、ようやく地上世界に降り立ったスサノオ。
この時、スサノオが降り立った場所は、出雲国(現在の島根県東部)にある斐伊川の上流だったと言われています。
この地で繰り広げられるのが、スサノオの神話で最も有名な「ヤマタノオロチ退治」なのです。
流れてくる箸
出雲の地に降り立ったスサノオですが、腹を減らしていました。
その時からの上流から、箸が流れてきたのです。
流れてきた箸を目撃したスサノオは、川上に誰か住んでいると思い、上流に向かいます。
すると、川上に家があり、悲しそうにしている一組の老夫婦と若い女性の姿を見つけたのです。
太古の昔、直接口につける箸は、その人の唾液が付着し使用者の『気』が入るとされていた為、基本的に使い捨てにしていたとされています。
これは『穢れ(けがれ)』を嫌うという古代日本から続く文化の一種で、現代日本人も無意識のうちに、この『穢れ』を避けて行動しており、現在でもその名残が残ってるのです。
例えば、あなたの家にある食器類。
おかずを入れる皿などは、家族共有ですよね。
おかずを入れる食器類は、箸で掴んで口に運ぶので直接口には触れません。
しかし、箸を始めとした、ごはん茶碗、味噌汁茶碗、湯のみ茶碗など、使用者が直接口を付ける食器類は『お父さんの茶碗』、『僕の茶碗』と言ったように個人の物が用意されている場合が多いのではないでしょうか?
これが、唾液はその人の『気』が入るという『穢れ』を嫌う文化の名残と言われています。
クシナダヒメとの結婚
悲しむ老夫婦を見つけ、不思議に思ったスサノオ問いかけます。
あなたたちは、どなた様ですか?どうして泣いているのですか?
老夫婦は答えます。
スサノオはヤマタノオロチについて尋ねます。
ヤマタノオロチとはどんな見た目をしているのかね?
すると老夫婦は、その姿をこのように述べました。
目はホオズキのように赤く、頭が八つ、尻尾も八つ、その体にはコケや杉の木が生えています。その大きさは八つの谷、八つの峰に渡り、腹には血が滲んでいます。
ヤマタノオロチは、八つの谷、八つの峰に渡る大きさですから、相当な大きさですね。
ヤマタノオロチの存在、そしてクシナダヒメに危機を知ったスサノオは、こう提案します。
クシナダヒメと結婚させてくれぬか?
しかし、テナヅチ&アシナヅチは、こう答えます。
あなたはどちら様なのでしょうか?
そう言えば、スサノオは自分の名前を名乗っていませんでした。
これは失礼。私はアマテラスの弟スサノオである。たった今、高天原を追い出されてきたところだ!
アマテラス様の弟君とは、恐れ多い・・・是非とも娘を妻に迎えてください。
このようにして、クシナダヒメとの結婚を条件とし、スサノオはヤマタノオロチを迎え撃つことになったのです。
スサノオvsヤマタノオロチ
ヤマタノオロチと戦うことになったスサノオは、クシナダヒメを櫛に変えて自らの頭に挿し、その身を守らんとしました。
とは言え、ヤマタノオロチは山八つ分の巨大な化け物です。
まともに戦って勝てる相手ではありません。
そこでスサノオはある作戦を立て、アシナヅチとテナヅチに
強い酒を作ろう!
と依頼しました。
つまり、ヤマタノオロチに酒を飲ませ、酔っぱらっている所に襲いかかる作戦です。
老夫婦が作った酒を八つの器に分けて配置し、いよいよスタンバイ完了。
スサノオはヤマタノオロチが現れるのを待ちます。
しばらくすると、ヤマタノオロチが姿を現しました。
意気揚々と現れたヤマタノオロチは、なんの疑いもなく、用意された酒をグビグビ飲み始めたのです。
そして、酔っぱらったヤマタノオロチは、すぐに眠り込んでしまいました。
タイミングを見計らっていたスサノオは、ヤマタノオロチが眠った事を確認し、十拳剣(とつかのつるぎ)で斬り付けました。
こうして、スサノオはヤマタノオロチを退治することに成功したのでした。
なお、ヤマタノオロチとは一体なんだったのかに関しては様々な解釈があります。また、倒されたヤマタノオロチの尻尾からは、後の神話で極めて重要になる、あるお宝が出現しています。
・ヤマタノオロチの尻尾から出てきたお宝とは?
こういったヤマタノオロチの情報は、こちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧になってみてください。
日本で最初の和歌
古事記には、ヤマタノオロチを退治した後にスサノオが詠んだ和歌が記されています。
八雲立つ 出雲八重垣 妻籠みに 八重垣作る その八重垣を
(やくもたつ いずもやえがき つまごみに やえがきつくる そのやえがきを)
実は、この歌が日本で最古の和歌とされています。
万葉集や古今和歌集などに代表される日本の伝統文化『和歌』。
そんな和歌を初めて詠んだのがスサノオだったんですね。
なお、スサノオがこの和歌を詠んだ場所に現在あるのが、八重垣神社(島根県松江市)だとされています。
オオクニヌシへの試練
ヤマタノオロチを退治した後、古事記はオオクニヌシの神話に突入します。
そして、オオクニヌシがスサノオの娘である「スセリビメ」を娶る神話があり、その中にスサノオが登場し、オオクニヌシに嫌がらせとも思えるような試練を与えています。
スサノオは、オオクニヌシがスセリビメに相応しい男であるか見極めようとしたのかもしれません。
結果的に、オオクニヌシはスサノオの試練を乗り越え、晴れてスセリビメと結ばれることになるのです。
この神話をもって、古事記におけるスサノオの登場は最後となります。
ちなみに、嫌がらせとも思えるスサノオの試練。
もはやオオクニヌシを殺しに行っているとも思える試練の内容は、コチラの記事で詳しく解説しています。
スサノオを主祭神としてお祀りしている神社
最後に、スサノオを主祭神としてお祀りしている神社をご紹介します。
ぜひ、詣でていただければと思います。
熊野大社(島根県松江市)
日御碕神社(島根県出雲市)
津島神社(愛知県津島市)
須佐神社(島根県出雲市)
八重垣神社(島根県松江市)
廣峯神社(兵庫県姫路市)
素盞嗚神社(広島県福山市)
八坂神社(京都府京都市東山区)
八坂神社(東京都東村山市)
氷川神社(埼玉県さいたま市大宮区)
久武神社(島根県出雲市斐川町)
スサノオまとめ
以上、スサノオの情報や神話をお伝えしてきました。
スサノオが登場する神話を大まかにまとめると、
・アマテラスとの誓約
・オオゲツヒメとのひと悶着
・ヤマタノオロチ退治
・オオクニヌシへの試練
の計5つになります。
スサノオは、アマテラスやイザナギと同じく、日本神話の中でも登場頻度が多く、人気・知名度共に非常に高い神様である一方、母のイザナミが恋しくて泣いていたり、大暴れしてアマテラスを困らせたり、ヤマタノオロチを退治して英雄になったりと、いろいろな側面を持っていて、とても興味深い神様だったのですね。
スサノオ以外にも、様々な日本神話を記事にしていますので、ぜひコチラからご覧になってみてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
【参考にした主な書籍】