『スサノオ(建速須佐之男命)』
と『オオクニヌシ(大国主神)』は、日本神話に登場する神様です。
スサノオはヤマタノオロチ退治の神話で知られ、オオクニヌシは稲葉の白兎や国譲り神話などで知られています。
また、オオクニヌシが『根之堅洲国(ねのかたすくに)』を訪れた際、スサノオから数々の試練を与えられています。
そんなスサノオとオオクニヌシですが、古事記では血の繋がりがあるとされています。
この記事では、古事記の記述を元に、
といった部分を系図を交えつつ、わかりやすくお伝えしていきます。
なお、オオクニヌシにはたくさんの神名がありますが、煩雑さを避けるため本記事では『オオクニヌシ』で統一致します。
スサノオとオオクニヌシの血縁関係
まずは、スサノオをオオクニヌシの関係性を系図で確認してみましょう。
このように、スサノオの子供を辿っていくと、やがて大国主に辿り着きます。オオクニヌシはスサノオの6世孫ということになりますね。
6世代と考えると、かなり世代差があるように感じますが、神様なので必ずしも人間の6世代と同じ感覚ではないようです。
と言うのも、古事記ではスサノオの娘の『スセリビメ』がオオクニヌシと結婚しているので、神様にとっては6世代程度の世代差はたいした問題ではないようです。
そして、この『スセリビメ』の存在が、スサノオの試練に大きく関わっているのです。
スサノオの試練

オオクニヌシに試練を与えた『スサノオノミコト』
世代は離れているものの血縁関係にあるスサノオとオオクニヌシ。
とは言え、基本的には別々の神話で活躍するのですが、2神が同時に登場する神話が一つだけあります。それが『スサノオがオオクニヌシに試練を与える場面』です。
以下、その場面を簡単にお伝えします。
女性関係で兄たちに命を狙われていたオオクニヌシ。
(※女性関係と言ってもオオクニヌシが悪いわけではない)オオクニヌシの母親サシクニワカヒメは、スサノオのいる根之堅洲国(ねのかたすくに)に逃げるようオオクニヌシを促しました。
母の言いつけ通り根之堅洲国にやってきたオオクニヌシ。根之堅洲国でスサノオの娘スセリビメと出会い、2神は惹かれ合います。
早速スセリビメは、
スセリビメとても素敵な神様と出会いました!
と、父スサノオに報告します。
するとスサノオはオオクニヌシを呼び出し、蛇がうじゃうじゃいる部屋で一晩過ごすように命じました。
そこでスセリビメは、蛇に襲われない方法をオオクニヌシにこっそりと教えました。
オオクニヌシがその方法を試すと、呪力によって蛇は大人しくなり、その晩はぐっすりと眠ることができました。
そして翌日、今度はムカデとハチがたくさんいる部屋に放り込まれたオオクニヌシ。
ここでもスセリビメの助言により、無事に一晩乗り切ることができました。
しかし、スサノオの試練はまだ続きます。
スサノオは野原に矢を放ち、それを取ってくるようオオクニヌシに命じます。
言いつけに従い、矢を拾いに行ったオオクニヌシ。
するとスサノオが野原に火を放ちました。
燃え盛る火炎に取り囲まれたオオクニヌシは絶体絶命です。
しかし、ここで1匹のネズミが現れオオクニヌシにこう言いました。
ねずみ地面を踏んでごらん
オオクニヌシはネズミに言われた通り地面を踏んでみると穴があき、その穴の中で火が収まるまでやりすごすことができました。
さらにネズミはスサノオが放った矢を持ってきて、オオクニヌシに渡しました。
焼け野原になった光景を見たスサノオとスセリビメは、オオクニヌシは焼死したと思いました。
たいそう悲しみ、葬式の準備を始めるスセリビメ。
ところが、矢を拾ってきたオオクニヌシが無事に帰還したのです。
その後もまだまだスサノオの
嫌がらせ試練は続きます。スサノオはオオクニヌシを家に招き、
スサノオ俺の頭のシラミと取ってくれ
と、オオクニヌシに命じました。
またまた素直に従い、オオクニヌシはスサノオの頭に近づいてみました。
ところが、スサノオの髪の毛にくっついていたのはシラミではなくムカデだったのです。
ここでスセリビメが一計を案じ、
スセリビメ木の実をプチっと噛んで吐き出せば、きっとムカデを噛み殺していると勘違いしてくれるはずです!
と助言しました。
オオクニヌシがスセリビメに言われた通りにすると、スサノオはオオクニヌシの好意に感心し、気持ち良くなってそのまま寝てしまいました。
この隙をつき、オオクニヌシはスサノオの髪を柱に縛り付け、太刀と弓矢と琴を持ち、スセリビメを背負って逃げ出しました。
しかし、琴の弦が木の枝に引っかかってしまい大きな音が鳴り響いてしまったのです。
この音で目覚めたスサノオは、オオクニヌシとスセリビメを追いかけようとしましたが、髪が柱に縛られていたため、その場から動くことができません。
髪がほどけないまま力任せに家を引きずり倒し、遠ざかっていくオオクニヌシにスサノオはこう叫びました。
スサノオその太刀と弓矢で、お前を殺そうとした兄たちを倒せ!!そしてスセリビメを妻に迎え、出雲の地に壮大な宮殿を建てろ!!
こうしてオオクニヌシは、スセリビメとの結婚を認められ、兄たちを倒し、立派な国を作っていくことになるのです。
なぜスサノオは試練を与えたのか?

出雲大社にある、大国主神の銅像【画像:Wikipediaより Flow in edgewise撮影】
かなり要約しましたが、以上がスサノオの試練に関する神話です。
スサノオがオオクニヌシに与えた試練をまとめると以下のようになります。
- 蛇やムカデ、ハチのいる部屋に放り込んだ
- 矢を拾いに行かせた隙に火を放った
- シラミを取るよう命じたが実際はムカデだった
もはや試練というよりも嫌がらせな気もしますが、なぜスサノオはこんなにも厳しい試練を与えたのでしょうか?
純粋に考えれば『スセリビメと結婚するのに相応しい男か見極めようとした』のでしょう。
ネズミやスセリビメに助けられっぱなしでしたが、オオクニヌシはなんとか試練を突破しました。
そして、最後は駆け落ちのような格好で、スセリビメと一緒に逃げ出しました。
なんですが、最後のスサノオの言葉を見る限り、結果的にはオオクニヌシを認め、スセリビメとの結婚も承諾したようです。
なお、厳密に言うと『大国主神(オオクニヌシノカミ)』という神名は、スサノオから逃げ出した際に、スサノオから命名されています。(それ以前は『オオナムヂ』と呼ばれていました)
この後、『大国主』の名が示す通り、オオクニヌシは国造りを行い、立派な国を作り上げます。
そして、日本神話でも有名なお話の一つ『出雲の国譲り』へと進んでいくのです。
オオクニヌシとスサノオの関係まとめ
以上、オオクニヌシとスサノオの関係、そしてスサノオがオオクニヌシに与えた試練についてでした。
ということになるのでした。
何を超えた嫌がらせとも思えるスサノオの試練でしたが、それを文句も言わずに受け続けたオオクニヌシも大したものだと思ってしまいますね。
スサノオもそれだけ熾烈な試練を与えるほどスセリビメを愛おしく想い、一方にオオクニヌシも試練に耐え抜くほどスセリビメに惚れ込んでいたのかもしれませんね。
この他にも、日本神話は魅力的な神様たちで溢れかえっています。ぜひ今まで以上に日本神話に触れて楽しんで頂ければと想います。

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