清少納言が書いた枕草子。
現代のブログとも形容されるその内容は多岐に渡っているものの、その中には現代人も思わず頷いてしまう『あるあるネタ』で溢れています。
この記事では、現代人も共感できる『あるある』を枕草子から抜粋し、清少納言の感性を楽しんで頂ければと思います。
1000年前の出来事とは思えないほど身近で、人の本質はいつの時代も変わらないことがわかりますよ。
なお、今回ご紹介する内容は、わかりやすさを重視し、全て意訳した言葉でお伝えしています。共感を伝えることを重視したため、正確な現代語訳にはなっていませんのでご了承ください。
※本記事の章段数は『角川ソフィア文庫 新版枕草子』に準じています。
枕草子あるある音声編
「枕草子あるある」を音声で楽しみたい方は、↓コチラ↓で聴くことができます。
本文を読むのが面倒な方、他のことをしながら枕草子あるあるを聴きたい方は、ぜひご利用ください!
【Vol.1】
【Vol.2】
【あるある1】続編は1作目を超えられない
とても面白い物語の1巻を読んだ時、その続編が読めるのは嬉しい! でも、実際読んでみたらがっかりすることもあります。
これは、枕草子 二六一段『うれしきもの』に書かれている内容です。
現在でも、めちゃくちゃ面白かった映画とかアニメがあって、その続編が製作されると知って気分が高揚する時ってありますよね。
ところが、いざ観てみたら『なんか思ってたのと違う・・・』と感じた経験ありませんか?
もちろん続編の方が評価が高い場合もありますが、多くの場合、現在でも1作目を超える続編ってなかなかお目にかかれません。
これは千年前から同じだったんですね。
【あるある2】注意できない親
甘やかされた子供が私の家にやってきて、部屋を散らかしたり物を壊したりする・・・。でも親と一緒にいるので強く注意するわけにもいかず・・・
肝心の親は大人同士のおしゃべりに夢中。強く注意もせずニコニコしている・・・親子ともども憎たらしい・・・
これは、枕草子 一四七段『人ばへするもの』に書かれている内容です。現代の言葉にすると『人の近くで調子に乗るもの』的な意味になります。
現在でも、病院の待合室、新幹線の中などの場で騒いでいる子供をたまに見かけますよね。
しかも親は優しく語り掛けるだけで強く注意することもしないので、一向に静かにならずイライラが溜まっていくという・・・。
そのようなケースに似ているように感じます。
千年前から同じ状況が繰り返されていたようですね。
【あるある3】余裕ぶっこいていたら・・・
期限までに余裕のある準備期間はついつい怠けてしまいます
これは、枕草子 二三段『たゆまるるもの』に書かれている内容です。現代の言葉にすると『怠けがちなるもの』的な意味になります。
これに関しては、共感できる方が特に多いのではないでしょうか?いわゆる『夏休みの宿題』状態です。
仕事でもなんでも、期日まで日数があると『明日でいいや』となってしまい、なかなか着手しないまま時間だけが過ぎていき・・・ギリギリになって慌てだすという・・・。
物事には余裕を持って取り組みたいと思ってはいるものの、ついつい怠けてしまうのは、人間の性なのかもしれませんね。
【あるある4】酔っ払いはめんどくさい
酒に酔って騒ぎ立て、しつこく絡んで酒をススメてくる人は憎たらしい
これは、枕草子 二五段『にくきもの』に書かれている内容です。
会社の飲み会なんかで、酔っぱらって酒を強要してくる上司や先輩は一定数いる気がしますし、仕事論的なことをグダグダ語ってくる上司とかもいたりしませんか?
和やかな雰囲気で楽しく酔う分には良いのですが、やはり度を越した酔っ払いとは関わりたくないものです。
めんどうな酔っ払いは昔もいたみたいですね。
【あるある5】悲劇のヒロイン気取り
人のことを羨んでばかりで、自分の境遇を嘆いてばかり。しまいには悪口を言いふらし自分だけ優位に立とうとする。こういう人って本当にめんどくさい・・・
こちらも、枕草子 二五段『にくきもの』に書かれている内容です。
こういう人って現代でもいますよね。
特に会社なんかだと、年齢だけは上だけど、口先ばかりで全然仕事ができない先輩に多い気がします。
自分が評価されない、仕事がうまく行かないのは、常に他人や環境のせい、いつも悲劇のヒロイン気取りの人・・・
人に限らず、こういう気質の国家もあるような・・・
ともかくも、清少納言もこういう人との付き合いには苦労していたようですね。
【あるある6】蚊がうざい
寝ようとしている時に、顔の近くに飛んでくる蚊が憎たらしい
引き続き、枕草子 二五段『にくきもの』に書かれている内容です。
これはよく分かりますよね。
この時代には網戸も蚊取り線香も無かったでしょうし、今よりもずっと鬱陶しかったに違いありません。
【あるある7】嫌な音
墨をすっている時に、硯(すずり)の中に髪が入っていて気付かずすっていた時、硯の中に小石が入っていて嫌な音がした時、こんな時は嫌な気持ちになる
またまた、枕草子 二五段『にくきもの』に書かれている内容です。
『墨をすっている時』という感覚だと、ちょっとわかりにくいかもしれませんが、例えば硯の中に髪が入ったというのは『ラーメンのスープにロングヘアーが浸かった』みたいな感じではないでしょうか。
また『墨をすっていたら小石が混じっていて嫌な音がした』というのも、『黒板を爪で引っ掻いたような感覚』ではないかと思われます。
そう捉えると、現代でも普通にあることですね。
【あるある8】噂話はやめられない
人の噂話や悪口は楽しくて仕方がありません
これは、枕草子 二五五段『人の上言ふを腹立つ人こそ』に書かれている内容です。現代の言葉にすると『人の噂話を悪く言う人は』的な意味になります。
現在の職場などでも、上司がいない時に同僚と悪口を言ったり、あるいは社内恋愛の噂がどんどん広がっていったり、なんてことよくありませんか?
また、芸能人の熱愛とか破局とか、そういったネタにうんざりしつつも、なんだかんだで注目を浴びますよね。需要があるからそういった報道は無くならないんでしょうね。
良くないこととはわかっていても、人間って本質的に噂話や悪口が好きなのかもしれませんね。
【あるある9】暑そうに見える人
太っていて髪の量が多い人は暑そうに見える
これは、枕草子 一一九段『暑げなるもの』に書かれている内容です。
現代の言葉にすると『暑そうなもの』的な意味になります。
これに関しては、もうそのままと言うか、現代でも同じような感覚ってありますよね。
この辺の感覚は今も昔も変わらないみたいです。
【あるある10】5月病
やる気満々で宮仕えを始めた女性が、いざ仕事を始めてみるとやる気をなくし、実家に帰りたがるのはどうしたことでしょう・・・
これは、枕草子 七五段『あぢなきもの』に書かれている内容です。現代の言葉にすると『面白くないもの』的な意味になります。
現在の職場でも、爽やかに入社してきた新入社員が、働くなかで現実を知り、たいして月日が経たない内にやる気をなくして覇気のない目をして働いている光景って見たことありませんか?
今風に言うと、5月病に似た状況が当時もあったのかもしれませんね。
【あるある11】いい男に目が行ってしまう
説経の講義をする人はイケメンが良い。顔をじっと見つめてこそお話のありがたみがわかるから!
これは、枕草子 三〇段『説経の講師は』に書かれている内容です。
いつの時代も、好みの異性には目を惹きつけられてしまうようです。
街中を歩いている時なども、イケメンや美女を見かけると、ついつい視線がそっちに行ってしまうことありますよね。
ちなみに、清少納言は同じ段で、
顔をじっと見つめてしまうから説法に集中できる
ブサイクだと気が散る
とも言っています。
確かに、話し手の顔をじっと見て聞いた方が、内容が頭に入ってくる気もしますね。
【あるある12】リアクションが薄すぎる
まぁまぁうまく詠めたと思った和歌を人に送った時、全然反応がなかったら興ざめです
これは、枕草子 二二段『すさまじきもの』に書かれている内容です。現代の言葉にすると『がっかりするもの』的な意味になります。
現代の感覚だと、『意中の異性に愛情込めてLINEとかメールでメッセージを送ったのに、そっけない返信がきた』、もしくは『返事がなかった』みたいな感じです。
あるいは異性じゃなかったとしても、可愛がっている部下とか、仲の良い友人に送った熱いメッセ―でも、リアクションが薄かったら興ざめですよね。
これも、経験したことのある方が多いのではないかと思います。
【あるある13】微妙な親戚関係
気持ちの通じ合わない親戚は、関係が近いようで遠い
これは、枕草子 一六一段『近うて遠きもの』に書かれている内容です。
一見、近い関係にありそうだけど実は距離のあるもの、といった感じです。
現代でも、親戚付き合いって結構面倒ですよね。普段は全然会わないのに、冠婚葬祭や年始の時だけ集まって気を使わなきゃいけなかったり。
親戚って血の繋がりがあるから確かに近い存在なんでしょうけど、実際は普段から接点のある他人(友人や恋人、職場の同僚とか)の方が、関係も情愛も濃かったりしますよね。
近い関係なのに実は距離のある親戚関係。まさに言い得て妙ですね。
【あるある14】あっという間の1年
人の年齢、春夏秋冬、あっと言う間に過ぎ去っていく・・・
これは、枕草子 二四五段『ただ過ぎに過ぐるもの』に書かれている内容です。現代の言葉にすると『あっと言う間に過ぎ去るもの』的な意味になります。
気持ちは20代の時のまま、でも気が付けば30代に40代になっている、1年なんてあっという間。
きっと、ほとんどの人が感じているのではないでしょうか?
ついこの前、正月を迎えたばっかりなのに・・・という感覚は千年前から変わっていなかったんですね。
【あるある15】女性も外に出よう
一生家庭の中にいて満足しているのではなく、宮仕えなどして女性も外の世界を知った方が良いのです。宮仕えする女を悪く言う男は本当に憎らしい・・・
これは、枕草子 二一段『生ひ先無く』に書かれている内容です。
この時代の貴族女性は家の中に引きこもっているのが普通で、清少納言のように外に出て働いている女性(宮仕えしている女性)は世間からあまり良く思われていなかったようです。
千年前の時点で、清少納言がこの発言をしているのは結構驚かされますが、一方で日本は西洋のような男女差がそこまで顕著ではなかったとも言えますね。
なにより、清少納言や紫式部など多くの女性が世界に先駆け活躍し、多くの文学作品を残しているのがその証拠です。
この言葉は、現代の価値観でも十分通用しますね。千年後を見越した清少納言の先見の明かもしれません。
番外編【あるある?】じゃないもの
ここまで、枕草子の中から、現代人でも共感できる内容を紹介してきました。
なんですが、枕草子にはあるあるだけじゃなく、よく意味のわからないことも結構書かれています。
ということで、番外編として清少納言の独特過ぎる感性をご紹介したいと思います。
※一応、学術的な解釈はされているので、そちらも併せて付記します。
なお、こちらも音声版がありますので、読むのが面倒な方や他のことをしながら聴きたい方は、ぜひご利用ください!
四二段『にげなきもの』より
髭面の老人が椎の実を前歯で噛むのは相応しくない
※いい歳した大人が子供のように前歯でポリポリと実を食べるのは良くない、という意味らしい。なお、椎の実とはドングリに似た実だそうです。
枕草子春曙抄七二段『おぼつかなきもの』より
暗いところでイチゴを食べると不安になる
※真っ赤なイチゴを暗闇で食べると色がわからないで、目で楽しめないから美味しさ半減、という意味らしい。
一五一段『えせ者の所得るをり』より
正月の大根は生意気だ・・・
※大根は料理の脇役なのに、正月の料理(正確には三が日に催される歯固めの行事で供される料理)に入ると偉そうにしているから、という意味らしいのですがあまりピンとこないですね。
一八三『病は』より
18、19歳くらいの美女が虫歯で苦しみ、汗ばみながら濡れた髪が顔にかかり、顔を真っ赤にして患部を手でおさえている姿は、何とも色気があります
※美人の髪が濡れて顔にかかっている姿は、確かに色気があるかもしれない。清少納言の個人的な好みだろうか?
枕草子のあるあるまとめ
以上、枕草子の中から現在でも共感できる『あるあるネタ』を紹介させていただきました。
今回ご紹介したのはごくごく一部に過ぎません。
枕草子には、共感できるものもそうでないものも含め、清少納言の独特の感性が随所に散りばめられていて本当に面白いです。
千年前の人たちがとても身近に感じ、当時の人々も同じ人間だったんたなと実感することができます。
枕草子は現代語訳や漫画になって、たくさんの書籍が発売されています。ぜひ、気軽阿気持ちで枕草子を読み、楽しんでいただければと思います。
【参考にした主な書籍】
【初心者向け枕草子】