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『若者にこそ日本神話を知ってほしい』拓麻呂です!
八百万の神(やおよろずのかみ)・・・日本を見守っている神様たちを、このように総称します。その名称が示す通り、沢山の神様がいる日本。そんな神様の頂点に位置する神様。
天照大御神(アマテラスオオミカミ、以下アマテラス)
一度はその名を聞いたことがあるのではないでしょうか。
現在は三重県の伊勢の神宮内宮にお鎮まりになっている、大変有名な女神様です。(男神とする解釈もある)
今回はそんなアマテラス様の神話、『天の岩戸隠れ』の物語。
この物語は、日本の頂点に君臨するアマテラス様が、
ヘソを曲げて引きこもった物語
として、後世に伝えられています。
では早速、日本の頂点に立つ女神さまが見せた、日本史上初の引きこもりに迫っていきましょう。
天照大御神と天の岩屋戸
弟スサノオの悪行にヘソを曲げたアマテラス
誓約(うけい)によってアマテラスに勝利?したスサノオは調子に乗って糞をバラ撒くなど、高天原(天上世界のこと)でやりたい放題。

そんなスサノオを最初は大目に見ていたアマテラスでしたが、溜まりに溜まった不満がついに爆発!!
天の岩戸と言われる洞窟に引きこもってしまいました。
日本史上初の引きこもりの瞬間です。
洞窟の入り口を大きな岩で塞ぎ、完全に隠れてしまったアマテラス。
太陽の女神様であるアマテラス様が隠れてしまったことで、世界は闇に包まれてしまったのです。
高天原の知恵袋!オモイカネノカミ
闇に閉ざされた世界に困り果てた八百万の神様たちは、ある一柱の神様に助けを求めます。
その神様の名は『思金神(オモイカネノカミ、以下オモイカネ)』。
この神様は、神様たちの悩みに応える存在として、日本神話に度々登場します。
正に高天原のご意見番のような存在です。
相談を受けたオモイカネは、ある一つの秘策を授けます。
その秘策とは『宴』。盛大な宴を催し、アマテラスの気を引こうという作戦です。
早速、八百万の神様たちは、祭りの準備に取り掛かります。
後世にまで語り継がれる、凄まじいドンちゃん騒ぎが始まります。
八咫鏡と八尺瓊勾玉の誕生
八百万の神はまず最初にニワトリをかき集め、一斉に鳴かせるという行動をとっています。
つまり、太陽の女神であるアマテラスに出てきてもらうことは、日の出を意味します。
現代でも『コケコッコー』と鳴くニワトリは朝の代名詞ですが、この当時からニワトリの鳴き声は朝の象徴であったということが、このエピソードから分かります。
その後に、鍛冶屋を探し出し、宴で使用する『鏡』と『珠(たま)』を作らせます。
この鏡と珠が作られたことは、日本の歴史において非常に重要な出来事です。
この鏡と珠こそが、現在も三種の神器として伝わる『八咫鏡(やたのかがみ)』と『八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)』です。
なお、八咫鏡は伊勢の神宮内宮に、八尺瓊勾玉は宮中に現存しています。
これこそが、神話と日本の歴史の連続性を示す理由であり、たかが神話と侮れない日本神話の面白さと奥深さなのです。
高天原のドンちゃん騒ぎ
八百万の神々は榊(さかき)の木を天の岩戸の前に植え、上の枝に『鏡』を、中間の枝に『珠』を取り付けました。下の枝には布を垂らしました。
ちなみの、下の枝に垂らした布は、現在の神社でも良く見かけるものです。
これです。
そして、岩戸の脇には『天手力男神(アメノタヂカラオニカミ、以下タヂカラオ)』がスタンバイしています。
いよいよ盛大な宴の始まりです。
八百万の神は、大騒ぎ。そして一柱の女神様が、さらに宴を盛り上げる行動に出ます。
『天宇受売命(アメノウズメノミコト、以下アメノウズメ)』
彼女は踊り手として、神々の前で踊っていたのですが、気分が高揚してきたのでしょうか?
着ていた服を下おろし、半裸状態で踊り始めたのです。
このアメノウズメの行動により、盛り上がりはピークを迎えました。
宴を楽しむ神々の声は、引きこもっていたアマテラスの耳にも聞こえてきます。
引っ張り出されるアマテラス
外から聞こえてくるドンちゃん騒ぎが気になり始めたアマテラス。
止むことのない神々の楽しそうな笑い声に、居ても立ってもいられなくなったアマテラスは、岩戸を塞ぐ岩を少しだけ開け、外の様子を確認してみました。
そこには、笑い転げ楽しそうにしている神々の姿。
アマテラスはアメノウズメに問いかけます。
『今、世界は暗闇に閉ざされているはず・・・それなのに何故そんなに笑っているの?』
アメノウズメは答えます。
『アマテラス様より尊い神様がいらしゃったので、皆で喜び笑っているのです』
なお、この回答はアマテラスを引っ張り出すための嘘です。そんな尊い神様はいません。日本の神様は嘘をつくのです。
しかし、この嘘にアマテラスは見事に騙されます。
自分がヘソを曲げて引きこもっている隙に後釜が現れてしまった・・・つまり私はもう用無し・・・
ショックを隠し切れないアマテラスは更に岩を開けます。
その瞬間、フトタマノミコトと言う神様が鏡(八咫鏡)を手に取り、アマテラス様の前に掲げました。
鏡に映るのは光り輝く神様の姿。
つまりアマテラスの姿なのですが、この頃(弥生時代くらい?)の鏡は非常に珍しいものです。おそらくアマテラス様も鏡の存在をよく知らなかったと思われます。
鏡に映った自分の輝く姿を見て、アマテラスは別の神様と勘違いしたようです。
このままでは本当に用無しになると焦り、遂に岩戸から半身を出したアマテラス。
岩戸の脇に控えていたタヂカラオは、その一瞬を見逃しませんでした。
アマテラスの腕を鷲掴みにし、彼女を岩戸から強引に引っ張り出すタヂカラオ。
間髪入れずフトタマノミコトが、岩戸の出入り口に注連縄(しめなわ)を張り、中に戻れないようにしました。
このようにアマテラス様は半ばハメられたような形で、岩戸から引っ張り出されました。
しかしながら、アマテラス様が岩戸から出てきたことで、世界に光が戻ったのです。
岩戸隠れから見えてくる太陽信仰
以上が、有名な日本神話『天の岩屋戸』と言われるお話です。
この神話ですが、様々な解釈がなされ現代人の探究心をくすぐり続けています。
最後にこの辺のお話をして、今回の記事を締めくくりたいと思います。
アマテラス様は、この神話が示す通り、光り輝く太陽の神様です。
太陽とは生命の源であり、古代には信仰の対象として崇められていました。
これは古代日本に限らず世界各地でも見られることです。
この事から、岩戸隠れとは日食を意味しているのではないかという説があります。
生命の源である太陽が突然覆い隠され、辺り一面闇に閉ざされる日食・・・科学技術が進歩していない古代人にとって、非常に恐ろしい現象であったことは想像にかたくありません。
また、少しトンデモ説かもしれませんが、邪馬台国の卑弥呼とアマテラスを同一視する見方もあります。
卑弥呼とは簡単に言うと祭祀の巫女であり、つまり太陽信仰の中心人物。
卑弥呼は中国(魏)の歴史書『魏志倭人伝』に記された名称ですが、読みは『ひみこ』です。つまり卑弥呼とは『日の巫女(ひのみこ)』ではないかとする説。
ただし、日本神話を実際の出来事として捉えるならば、卑弥呼の時代(三世紀初頭から中頃)よりも、ずっと前のお話です。まぁ、この辺はあまり深く考えず、神話は神話として楽しむのがベストなのかもしれません。
日本神話は、考古学の発見から、全くの作り話でないことが分かってきています。
ただ全てが事実では無い事も明らかです。
神話を荒唐無稽な創作話と侮ると、古代日本の真実を見誤ります。
神話を歴史と一部として見る場合、史実と創作の部分を自分なりに見極めながら読むと、より一層、日本神話が奥深い物語として楽しめるようになりますよ。
~神楽について~
現代でも神社に神楽(かぐら)を奉納することがあります。神楽とは、神前で人間が踊ったり舞ったりして神様に喜んで頂く行事です。
今回、アマテラス様が籠る岩戸の前で実行された、アメノウズメの舞い踊りやドンちゃん騒ぎは、神楽の起源と見る事もできそうです。
天の岩屋戸と言われる一連の物語は、三種の神器や神楽、注連縄など、現代にまで続く神事や神器が初めて出てくる物語です。
そして、日本の最高神が史上始めて見せた引きこもりも、この神話が初出です。
始めてづくしの天の岩戸隠れは、現代まで続く神話と歴史の連続性を示す、日本の歴史にとっても非常に重要な神話なのです。
日本神話とは、どんな物語なのか?もっと気になる方はこちらにご入場ください。
では、今回はこの辺で!ありがとうございました。