枕草子 二九九段『雪のいと高う降りたるを』簡単解説!香炉峰の雪に秘めた清少納言の想い

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人物のエピソード

清少納言が書いた世界最古の女流随筆集『枕草子』。
枕草子に書かれている内容は多岐に渡りますが、その中でも特に印象深いのが中宮定子との想い出の一コマです。

定子は一条天皇の妻で、清少納言は定子に仕える女房(定子の身の回りのお世話をする女性)でした。

 

今回はそんな定子と清少納言のエピソードの中から、『雪のいと高う降りたるを』をご紹介します。このエピソードは『香炉峰の雪』と言われる、枕草子を代表する非常に有名なお話です。

このエピソードは一見すると、清少納言の自慢話かとも思われる話なのですが、その裏には彼女が生涯忘れなかった大切な想いが詰まっています。

 

この記事では、清少納言が『香炉峰の雪』に秘めた想いに迫ります。

 

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超有名なエピソード『香炉峰の雪』

雪が降り積もったある日の出来事

清少納言
清少納言

では『香炉峰の雪』がどのようなエピソードなのかお伝えします。

 

ある寒い日の出来事・・・この日は雪が降り積もり、外は一面銀世界。
定子様にお仕えする女性たちは、御格子を下したまま(閉め切られて外が見えない状態)、火鉢を囲み談笑していました。その中には当然、清少納言と定子様の姿もあります。

 

すると定子様が、清少納言に問いかけてきました。

 

定子
定子

『少納言、香炉峰の雪はどんなでしょう?』

※この言葉の裏には、定子のある意図が隠されているのですが・・・それは後ほどお伝えします。

 

この言葉を聞いてあることを思いついた清少納言は、閉め切った御格子を上げさせ御簾(みす)をめくり上げます。(現代的なイメージとしては、閉め切った部屋のカーテンと窓を開けたようなイメージと思ってください)

すると定子様の目に飛び込んできたのは、あたり一面真っ白な雪景色。

 

この雪景色を目にした定子様はニッコリとほほ笑み、『さすが少納言』と大層ご満悦な様子。周囲にいた女性たちも賛辞の言葉を清少納言に贈りました。

 

香炉峰の雪とは??

以上が『雪のいと高う降りたるを』の内容なのですが、これだけだと何のことは無いエピソードに思えますよね。

なんですが、このエピソードの本質は『清少納言が定子様のお考えを読み取り、機転を利かせてそれに答えた』というところにあります。

 

まず定子の問いかけはこうです。

『香炉峰の雪はどんなでしょう?』

この言葉には定子が清少納言に投げかけたあるメッセージが込められていました。

 

それは中国の白居易(はくきょい)という人物が詠んだ一節。

遺愛寺の鐘は枕を欹てて聞く、香炉峰の雪は簾をかかげて看る

定子は、この漢詩の後半部分を前提として清少納言に問いかけたのです。

ちょっと小難しい話ですが、要するに定子は『外の雪景色が見たい』と言っているのです。

 

しかし、定子は『香炉峰の雪はどんなでしょう?』と問いかけているので、これを素直に受け取ってしまうと、『雪が降り積もっております』などと言葉で回答してしまいそうですが、清少納言は違いました。

定子が『遺愛寺の鐘は枕を欹てて聞く、香炉峰の雪は簾をかかげて看る』という漢詩を踏まえて『香炉峰の雪はどんなでしょう?』と問いかけていることを清少納言は瞬時に理解し、御簾を上げて外の景色を披露するという行動に出たのです。

 

つまり清少納言は、『香炉峰の雪は簾をかかげて看る』という白居易の漢詩を、定子様の目の前に再現してみせたのです。

 

定子の意図を瞬時に汲み取り、見事な機転を見せた清少納言。そんな彼女の機転に、ご満悦な定子。これが、枕草子を代表するエピソード『香炉峰の雪』です。

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香炉峰の雪に込めた清少納言の想い

以上が『香炉峰の雪』の内容なのですが、見方によっては、清少納言自身の機転の早さと定子に褒められたという自慢話のように見えなくもないですよね?
確かにそのような意図も、多少はあったのかもしれません。

 

しかし、清少納言が枕草子を書いた背景を理解すると、ちょっと違った解釈で読む事ができます。

今までの印象が覆る!清少納言が枕草子に込めた本当の意味と内容とは
...

 

枕草子とは、男たちの政略に巻き込まれた定子とその一族が没落していく中で書かれた作品です。
しかし、枕草子には没落する定子の悲壮な姿など一切書かれていません。そもそも最初っから定子の悲壮など書くつもりはなかったと思われます。

 

枕草子が描く定子は、いつも気高く美しい才気あふれるお姫様。そして、定子自身も常に明るく振る舞い、その苦境を表に出そうとしませんでした。清少納言はいつも定子を憧れの眼差しで見つめ、主従の関係を超えた深い信頼で結ばれていました。

 

定子の没落という辛い現実を払いのけるように、楽しかった想い出だけを綴った作品。それが『枕草子』の裏側に隠された想いなのです。

 

そんな定子に喜んで頂けた清少納言の大切な想い出を綴ったエピソード、それが『香炉峰の雪』が語る真実だと考えています。枕草子は定子様との楽しかった想い出だけを切り取った、ちょっと切ない作品なのです。この事実を忘れると、清少納言の意図と枕草子の本質を見誤ります。

 

『香炉峰の雪』を書く清少納言の姿、それは得意顔で自慢気な姿ではありません。むしろ、自らが誠心誠意お仕えした定子とその一族が政争の犠牲者となっていく現実の中、悔しさいっぱいで綴っていたことでしょう。

 

枕草子に綴られた『雪のいと高う降りたるを』とは、決して清少納言の自慢話なだけではなく、彼女が心に秘めた藤原定子との大切な想い出の一幕だったのです。

 

なお、原文をこの下に追記しておきます。読みやすさを考慮し適宜改行や句読点を入れています。

雪のいと高う降りたるを、例ならず御格子まゐりて、炭櫃に火おこして、物語などして集りさぶらうに、

「少納言よ、香炉峰の雪、いかならむ」

と、おほせらるれば、御格子上げさせて、御簾を高く上げたれば、笑はせたまふ。

人々も「さることは知り、歌などにさへ歌へど、思ひこそ寄らざりつれ。なほ、この宮の人には、さべきなめり」と言ふ。

 

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