ミヒャエル・エンデの『モモ』をネタバレなしでレビューします。
本書のポイントをお伝えすると・・・。
この記事では、モモの大まかな展開やあらすじ、見所、オススメできる人できない人、作品の特徴など、ネタバレを避けつつご紹介していきます。これから読んでみようか悩んでいる方は、ぜひ参考になさってください。
※本記事では、物語の核心に触れるようなネタバレはしていませんが、できるだけ事前情報が無い状態で作品を読みたい方は、自己責任の上、本記事を読み進めて頂くようお願い致します。
書籍データ
書名:モモ(原題:Momo)
著者:ミヒャエル・エンデさん
翻訳:大島かおりさん
項数:新書サイズ/409ページ(単行本/360ページ)
ジャンル:児童文学(小学生5年生・6年生以上)
【あらすじ】(「BOOK」データベースより引用)
町はずれの円形劇場あとにまよいこんだ不思議な少女モモ。町の人たちはモモに話を聞いてもらうと、幸福な気もちになるのでした。そこへ、「時間どろぼう」の男たちの魔の手が忍び寄ります…。「時間」とは何かを問う、エンデの名作。
【筆者の所感】
【簡単なあらすじ】
円形劇場の遺跡に住み着いた小さな少女モモ。いつも裸足で髪はボサボサ、サイズの合わない大人用のジャケットをはおり、継ぎ接ぎだらけのスカートを履いています。
そんなモモには「人の話を最後までしっかりと聞く」という、簡単そうで意外と出来る人が少ない素敵な特技がありました。やがて、モモに話を聞いてもらうため街の人たちがモモの元を訪れるようになり、皆幸せな気持ちになって帰っていきます。モモ自身も街の人たちが会いに来てくれるのをいつも楽しみにしていました。
ゆるやかな時が流れる日常。
しかし、モモや街の人たちの幸せは長くは続きませんでした。モモと街の人々に迫る「灰色の男たち」。モモたちは一体どうなってしまうのか?
時間どろぼうと、ぬすまれた時間を人間にとりかえしてくれた女の子のふしぎな物語
モモはこんな人にオススメ
「モモ」をおすすめしたい方を3つのポイントに絞ってお伝えします。
- 毎日の仕事に追われている人
- 聞き上手になりたい人
- 子供だけでなく全ての大人にもおすすめ
おすすめ① 毎日仕事に追われている大人
あなたは、ついこんな言葉を言ってしまっていませんか?
「仕事が忙しくて・・・」、「なかなか時間がとれなくて・・・」
自分では言っていなかったとしても、とても良く聞く言葉ですよね。
あるいは、あなたの会社でこんなことが起こったことはありませんか?
毎日仕事が忙しすぎるから時間短縮のために効率化を図る・・・そして、効率化に成功しゆとりが生まれる・・・でも、効率化できたんだから、その時間にもっと仕事がこなせるのでは?・・・そして仕事を増やして、また時間がなくなる・・・・・・・
日々生活のために働く、しかし仕事のために普段の生活もままならなくなったら・・・・日常の「楽しい」という気持ちを忘れてしまったら・・・
幸せな生活、幸せな働き方、幸せな時間の使い方とは一体なんだろう?
そんな疑問に答えてくれるのが「モモ」という作品です。
「おすすめと言われても、そもそも本を読んでいる時間なんて無い」なんて状況もあるかもしれません。ですが、そういった状況であればあるほど、ぜひモモを読んでみてください。忘れていた大切なものを、思い出させてくれますよ。
おすすめ② 聞き上手になりたい人
あなたは「人の話を聞く」ことができますか?
もしかしたら「人の話を聞くなんて誰でもできるでしょ!」と思われるかもしれません。ですが、実は「人の話を聞く」ことが出来ない人の方が圧倒的に多いのです。
人から話を聞いている時に、途中で遮って自分の言いたいことを話し始めてしまったり、意見を言ってしまったり、アドバイスをしようとしてみたり・・・
あなたも、こういったケースを経験したことがあるのではないでしょうか?
「人の話を最後まで聞く」のは案外難しいものなのです。
自分の話をきちんと聞いてくれる人に、嫌悪感を持つ方はあまりいないと思います。
下手にアドバイスをされるより、黙って最後まで聞いてもらえただけの方が気分が晴れたりするものです。
おすすめ② 信じられる人がいることの素晴らしさを感じたい
モモが人の話をしっかり聞くことで、一体どのようなことになっていったのか?ぜひあなたの目で確かめてみてください。
おすすめ③ 全ての大人にもおすすめ
モモは児童文学(推奨年齢は小学5年~6年以上)にカテゴライズされてはいるのですが、むしろ大人が読んだ方がいい作品だと感じています。
モモにはとても大切な教訓が込められているのですが、この教訓はある程度社会で揉まれた大人にこそ刺さります。逆に、小学生だと人生経験の少なさから共感しづらいように思いました。
とは言え、大人に敷かれたレールというか・・・例えば親に決められた進学コースを突き進まされているような子供には、何か考えさせられる部分があるかもしれません。
一方で、純粋に物語としても面白いので、そういった意味では大人も子供も楽しめる作品です。
モモがオススメできないケース
続いて「モモ」があまりおすすめできないかなと感じたケースをお伝えします。
モモは全体を通してファンタジー色の強い作品です。
作中に込められたメッセージは極めてリアリティのあるものですが、作品の設定や展開などはかなりファンタジー色が強めです。
なので、設定や展開にリアリティを求める方にはあまり向いていないと感じました。
「モモ」Q&A
読後感は良い?悪い?
読後感は良いです。
読んだ後に微妙な気持ちになる(いわゆるイヤミス)ような終わり方はしません。この辺に関しては非常に児童文学らしく描かれているので、安心して読み終えられますよ。
感動する作品かどうか?
いわゆる「感動作」を謳っている作品ではないので、涙をボロボロ流すような感じにはならないと思います。ただ、モモや登場人物の頑張りや心情などに感情移入し、心を揺さぶられる展開はかなりあります。
筆者的には、感動する作品というよりは「笑顔になれる作品」といった方が合っているように感じます。
翻訳の読みやすさは?
本書は海外文学です。海外の作品は翻訳次第でとても読みにくい場合があるのですが、本書は普通に読めるのでご安心ください。
あえてお伝えするとしたら、児童文学であるがゆえに簡単な漢字でもひらがなで書かれている箇所が多く、そういった部分での読みにくさは若干ありました。
登場人物の魅力はある?
モモに関して言えば、浮浪児であることや特徴的な風貌、人の話をしっかり聞ける特技を持っている以外には特筆するような個性があるわけではなく、性格的な個性という点ではいたって普通の女の子です。
なんですが普通であるがゆえに、落ち込んだり、寂しがったり、時には涙を流したりと終始モモの頑張りを応援したくなるような素敵な魅力があったように感じます。
また、モモの親友の「掃除夫のおじいさん」と「観光ガイドの若者」といった登場人物がいるのですが、個性としてはこの2人もかなりキャラが立っているように感じました。
モモの総評とまとめ
以上、ミヒャエル・エンデ著「モモ」のネタバレなしレビューでした。
モモは1973年に刊行された作品であるにも関わらず、現代でも全く色褪せないメッセージを発し続けています。と言うより、現代人にこそ突き刺さるメッセージが込められています。
最後に作中から、モモから学べる教訓を全て詰め込んだようなとっても素敵な言葉があるので、一部引用してご紹介し、レビューを終わりたいと思います。
光を見るためには目があり、音を聞くためには耳があるのとおなじに、人間には時間を感じとるために心というものがある
時間がない、仕事が忙しい・・・
もしあなたが日々の生活でそう感じているのなら、ぜひモモを読んでみてください。忙しさに追われ忘れていた「楽しい毎日を過ごすために必要なこと」をきっと思い出させてくれますよ。