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拓麻呂です。
平安時代中期の女流文学を代表する作品『更級日記(さらしなにっき)』。
枕草子や源氏物語に比べると、やや知名度の劣る更級日記の中身は、一体どのような内容になっているのでしょうか?
更級日記の内容
序盤
更級日記は、平安時代の中頃、現在の千葉県 市川市で暮らしていたとされる、ある女性の回想録です。
作者は『菅原孝標女(すがわらのたかすえのむすめ)』と言います。
菅原孝標の娘であることは分かっていますが、本名や女房名は伝わっていません。
父の菅原孝標の赴任先である千葉県で、家族と一緒に暮らしていましたが、任期満了に伴い京都へ戻ることとなります。
ここから、更級日記は始まります。
この時、作者は源氏物語を読んでみたいと願っており、その夢が叶えられるかもしれないと心を躍らせながら京都へ向かいます。
現代と違って、当時はコピー技術や製本技術なんてありませんので、話題の物語が読みたいと思っても、そうそう手に入るものではありません。
ましてや、京都から遠く離れた千葉県では、夢のまた夢です。
このような状況からスタートし、序盤では京都に向かう道中の出来事が綴られています。
中盤
無時に京都へたどり着いた彼女は、源氏物語を手に入れて、寺参りにも行かず読みふけります。
そして、源氏物語の世界に憧れを抱くようになります。
このようなことから、彼女は『元祖オタク女子』と言われることがあります。
源氏物語の舞台である宮廷で働く、つまり宮仕えに憧れる彼女の理想。
しかし、さまざまな困難が降りかかります。
理想と現実に悩む作者の心。
宮仕えを父親に反対されたり、恋が上手くいかなかったり・・・。
源氏物語の世界とは程遠い、厳しい現実に打ちのめされながらも、強い憧れを諦めきれない彼女の心の揺れが見事に綴られています。
これが、中盤の主な内容です。
個人的には、ここが更級日記で一番の見どころだと思っています。
終盤
序盤から中盤では、キラキラに憧れ続けた作者ですが、終盤は一転します。
憧れた理想はほとんど叶えられず、平凡に過ごしている自分の半生を後悔し始めます。
若いころは源氏物語に傾倒しすぎて疎かにしていたお寺参りなどに行き、これまでの人生を悔いでいます。
やがて、夫に先立たれ、彼女は抜け殻のようになってしまいました。
一人ぼっちになってしまい、絶望に打ちひしがれながらも、彼女は筆をとることにしました。
平凡でつまらない人生と真っ向から向き合い、これまでの半生を振り返った回想録。
それが『更級日記』です。
更級日記の魅力
源氏物語の世界に憧れて理想を掴みかけたにも関わらず現実の前に打ちのめされた彼女の人生。
彼女はそんな人生を、平凡でつまらないと評しています。
しかし、本当にそうでしょうか?
確かに、思い通りに行かなかった部分はありました。
夢が叶った部分もあれば叶わなかった部分もある。
自分では、平凡でつまらない人生だと感じるかもしれない。
でも、彼女は夢と現実の間で揺れる自分と正直に向き合い、更級日記を残しました。
彼女にしか書けない、彼女にしか分からない、彼女のオリジナルな心の揺れを書き残しました。
そのオリジナルな日記が千年経っても残り、読む者の心を揺さぶり続けています。
更級日記とは言い換えれば作者の『自分史』です。
自分の人生なんて・・・自分には魅力がない・・・自分ではそう感じていても、第三者から見れば決してそうではありません。
自分の魅力って、自分では分からないものです。
平安時代の女流文学は数あれど、その中でもトップクラスに面白いのが更級日記だと僕は想っています。
まとめ
以上、更級日記の内容の簡単解説でした。
かなり簡潔に紹介してみました。
平安時代の女流文学の中でも、更級日記はかなり取っつき易い作品です。
物語っぽいこともあり、現代語訳であればスッと入ってくる内容になっています。
理想と現実の狭間で揺れる心は、現代人と何も変わりません。
千年前に生きたオタク女子の回想録に、きっと共感できるはずですよ。
では、今回はこの辺で!
ありがとうございました。