紫式部が書いた源氏物語は、20カ国以上の言語に翻訳され、世界各国で親しまれています。
・源氏物語の凄さは、一体どこにあるのか?
この記事では、私なりの考えをお伝えしたいと思います。妄想がふんだんに盛り込まれておりますので、ご理解の上お読みください。
源氏物語が伝える千年前から不変の人間心理
源氏物語を、あえて一言で表すならば『恋物語』です。
源氏物語には、主人公の光源氏を通して、男女の関係という形式で人間模様が描かれています。
『恋愛』って、現代でも、多くの人が持つ悩みでもあり、周囲の人たちが興味を持つことでもありますよね。
Yahoo!!知恵袋にも、数多くの恋愛相談が投稿されていますし、有名人の熱愛とかスキャンダルなんかは、いつの時代も注目を集めます。
恋愛の悩みって、いわば人間関係の悩みです。
・お金
・健康・美容
これら3つは、マーケティングの世界でも「顧客に訴えかける三大要素」とされているほど、人間の本能的な欲求を刺激するものです。
『人間関係』は、会社での人間関係が面倒、素敵な異性とお付き合いしたい、など。
『お金』は、金持ちになって裕福に暮らしたい、貧乏にはなりたくない、など。
『健康・美容』は、病気になりたくない、老いたくない、ダイエット、など。
その中の一つである「人間関係」は、いつの時代も、どこの国の人でも悩みを抱える、不変の人間心理なんですね。
そんな人間関係に関わる「恋愛」が描かれている作品。それが、源氏物語なのです。
源氏物語は、恋敵への嫉妬心、主人公である光源氏に対する切ない恋など、千年前から変わらない恋愛感情が、紫式部の巧みな描写で紡がれ、多くの現代女性たちが共感し、世界各国で親しまれる大ベストセラーとなって、今も売れ続けているのではないでしょうか。
実際、紫式部は源氏物語の作中で、光源氏にこんな言葉を与えています。
神代より世にあることを記しおきけるななり。日本紀などはただかたそばぞかし。これらにこそ道々しくくはしきことはあらめ。
(物語というものは神代からこのかた世間に起こったことを書き残したものだと言います。「日本紀」などはほんの一面にすぎないのです。これら物語にこそ、道理にもかない、委細を尽くした事柄が書いてあるのでしょう。)
つまり、紫式部が何を伝えたかったかと言うと・・
日本紀などの歴史書は事実が述べられているに過ぎません。物語の中にこそ物事の真実が描かれているのです。
と私は捉えています。
これは紫式部の物語論として有名な部分なのですが、彼女の道理とは「人の心情、感情、人間関係」のことなのではないでしょうか。
紫式部は物語という形で、それを表現しました。
そして物語の中で、人間の感情に訴えかけ、共感を得るという事を、紫式部も重視していたのです。
本能的な感情に、国籍は関係ありません。
そんな人間の普遍的な感情をストレートに訴えかけた作品だからこそ、源氏物語は千年経っても色褪せない、そして国内、海外を問わない、大ベストセラー作品なんだと考えています。
日本が世界に誇る源氏物語
源氏物語は、現在の一般的な400字詰め原稿用紙2400枚にも及ぶ長大な作品で、「世界で一番古い女性が書いた長編小説」とも賞されています。
これだけでも、単純に凄いのですが、もうひとつ付け加えておきたいことがあります。
それは、源氏物語が成立した背景には、女性が活躍する場があったということです。
源氏物語が書かれた平安時代の中期は、いわゆる「国風文化」の全盛期で、枕草子や更級日記、蜻蛉日記など、多くの女流文学が誕生しています。
今からおよそ千年前に、政治や軍事とは違った『文学』という一種の娯楽文化が、女性たちの中から発展したことは、歴史的に見ても稀なことです。
平安時代の中期に、突如としてたくさんの女性が登場し、日本の歴史を彩っているのです。
権謀術数が渦巻いていた平安時代中期とは言え、基本的には国外からの圧力が無く、ある程度の平和が保たれていたこと、そして、その平和を基盤として、宮廷内に女性が活躍できる場が設けられていたことが大きく影響していると感じます。
戦時とは、基本的には、力で勝る男性が活躍する時代です。
つまり、戦時だと、どうしても男性が注目されてしまいます。
今からおよそ千年前、日本の外では当たり前のように戦争がありました。
しかしその中で、日本は一定の平和を保ち、多くの女性たちが活躍していました。
もちろん、全てにおいて男性と女性が同じ扱いをされていたわけではありません。
ですが、女性たちが「国風文化」の担い手として活躍していた事実こそ、日本が世界に誇れる先進性であったと考えています。
源氏物語の評価まとめ
以上、源氏物語が世界でも評価されている理由でした。
源氏物語自体も、そして源氏物語が誕生した時代背景も、日本が誇りに思って良い部分だと私は考えます。
そんな源氏物語を、一人でも多くの方に、源氏物語を読んでいただければ嬉しいです。
とは言え、あまりにも長い作品ですので、冒頭のストーリーを相関図付きで簡単に解説した記事も書いてみました。
ぜひ、コチラからご覧になってみてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
【参考にした主な書籍】