平安時代中期に書かれた枕草子。作者は清少納言。
今回は、枕草子二七〇段『人の上言ふを腹立つ人こそ』。この章段は、清少納言が考える『悪口』について書かれています。
一見すると結構ひどい事が書いてありますが、よくよく考えると人間の深層心理は不変的なものであることが、この章段から読み取れます。
では見ていきましょう。
※枕草子の章段には諸説あることをご了承ください。
現代版枕草子 270話 ~人の悪口は楽しい~
人の悪口に対して怒る人は、ホントに困りもの。
こんなに楽しいことは、言わずにいられませんよ。
私(清少納言自身)の事はさて置き、人の欠点こそ、心にしまっておくことが出来ず、人に話したくなる事は他にないでしょう。
でも、悪口は良くないことのようにも思えなくはないし、相手がいつの間にか聞きつけて私を恨んだりするかもしれない。これは面白くない。
でも、関係を壊したくない人のことは、可哀そうだから大目に見て(悪口を)言わないだけのこと。
そうでもなければ、話に花が咲いて笑い転げてしまいます。
枕草子 二七〇段の個人的解釈
この章段は、清少納言の『悪口感』とでも言うべき本音が書かれています。
まず、この章段のタイトルですが『人の上言ふを腹立つ人こそ』。
なんか意味が分かりにくいですね。
このタイトルは『人の噂話に腹を立てる人は』というような意味です。
で、『人の上』というのが、人の噂話、陰口みたいな意味です。
そしてその内容を一言で言うと、
悪口大好き!!!
ということです。
かなりひどい事を書いてますね・・・。
しかし、この章段で面白いのは、彼女自身の事は棚上げしている点。
枕草子の内容から推測すると、清少納言はかなり強気な性格だったようなので、彼女自身もかなり悪口を言われていたのではないでしょうか。自身、その事を自覚していたかのような書きっぷりです。
さらに、もうひとつの見どころは、一応、悪口は良くないと自覚している点。
これは悪口大好きな清少納言の、ちょっと微笑ましい言い訳のように感じます。一応弁解しているところに彼女の可愛らしさを感じるのは僕だけでしょうか・・
そして、この章段の真骨頂は何といっても、人間は千年前から変わらないということ。
人の悪口は良くないと分かっていても、やっぱり楽しい。この感覚、何となく分かるような気がしませんか?
なお、詳細はこちらの記事をご覧ください。
この章段を、もう少し深く味わいたい方に向けて書いてます。
そして、もっと枕草子の世界を覗いてみたい方は、こちらからお好みの記事をご覧ください。
では、今回はこの辺で!ありがとうございました。
枕草子 二五四段『人の上言ふを腹立つ人こそ』原文は、この後に書いてます。
【原文】 枕草子 二七〇段『人の上言ふを腹立つ人こそ』
人の上言ふを腹立つ人こそ、いとわりなけれ。いかでか言はではあらむ。我が身をば差し置きて、さばかりもどかしく言はまほしきものやはある。
されど、けしからぬやうにもあり、また、おのづから聞きつけて、恨みもぞする、あいなし。
また、思ひ放つまじきあたりは、いとほしなど思ひ解けば、念じて言はぬをや。さだになくは、うちいで、笑ひもしつべし。