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拓麻呂です。
平安時代中期、国風文化と言われる優雅な文化が花開きます。
その国風文化を形成するひとつの原動力として、当時宮廷に出仕していた女房たちの存在は無視できません。
そんな国風文化を代表する四名の女房たちを『四才女』と言います。
四才女とは、清少納言、紫式部、和泉式部、そして今回の主人公『赤染衛門(あかぞめえもん)』を指す総称です。
この赤染衛門、歌人としての評価が高く、その和歌は百人一首にも選ばれています。
しかしながら彼女は他の三名に比べ、知名度でもやや劣り、少々インパクトに欠ける感じがします。
そんな四才女の一人赤染衛門とは、一体どのような人物だったのか。
そして、なぜ影が薄いのか?
今回は、その辺りを掘り下げてみたいと思います。
目次
良妻賢母『赤染衛門』
紫式部が見た赤染衛門の人物像
まずは、赤染衛門がどのような人物だったのか?
それを知る上で大きな手掛かりとなるのが『紫式部日記』。
源氏物語で有名な紫式部は、この日記の中で赤染衛門の人物像や和歌の才能に触れています。その内容を要約すると以下のようになります。
彼女のことを、中宮様や道長様たちは『匡衡衛門(まさひらえもん)』なんてあだ名を付けて呼んでいます。
この方は格調高い歌風で、歌を詠み散らしたりしません。
私(紫式部)が知っている限り、ちょっとした時に詠んだ歌こそ、素晴らしい詠みっぷりです。
紫式部日記から分かる赤染衛門
紫式部日記の記述でまず注目したいのが、赤染衛門のあだ名が『匡衡衛門(まさひらえもん)』であったという事。
これはどのような意味なのでしょうか?
匡衡とは、赤染衛門の夫である『大江匡衡(おおえのまさひら)』を指しています。赤染衛門と大江匡衡はおしどり夫婦と伝わっています。その夫婦仲は宮廷でも有名だったのでしょう。紫式部日記が語る通り、中宮様や藤原道長もその事を知っていて『匡衡衛門』という呼ばれ方をしていたものと思われます。
また、匡衡との間に授かった息子の出世を強く願い、その手助けをしたと伝わっています。
このようなエピソードから分かる赤染衛門は正しく良妻賢母。妻として、母としてお手本のような女性だったのではないでしょうか。
紫式部日記から分かる和歌の才能
続いては赤染衛門の和歌について。紫式部は彼女の歌風をこのように評しています。
この方は格調高い歌風で、歌を詠み散らしたりしません。
つまり、赤染衛門の和歌は品があり手堅い和歌だったのでしょう。
これは意外と重要なことで、紫式部はこの日記の中で、同じく才女の誉れ高き『和泉式部』についても触れています。

和泉式部は恋多き女性として有名で、その和歌も激情的な恋の歌が多いのが特徴です。
紫式部の目には、
品があり落ち着いた歌風の赤染衛門。
閃きが生み出す突飛な歌風の和泉式部。
このように映っており、赤染衛門と和泉式部と対局の存在として捉えています。
清少納言、紫式部、和泉式部との比較
では、最後に他の才女たちと赤染衛門を比べてみましょう。
※彼女たちが残した作品から感じる僕の所感です。
清少納言
【代表作】枕草子、和歌
【性格】ヒステリー、強気、物事をはっきり言う、陽気
紫式部
【代表作】源氏物語、紫式部日記、和歌
【性格】冷静、ライバル意識が強い、意外と小心者、陰気
和泉式部
【代表作】たくさんの和歌。和泉式部日記 (彼女の作ではないとする説もあり)
【性格】情熱的、浮気っぽい、情緒不安定、男好き
このように、清少納言、紫式部、和泉式部は自身を代表する作品を後世に残しており、また、それぞれ一貫した強烈な個性を持っていることが分かります。
では、赤染衛門はどうでしょう。
赤染衛門
【代表作】和歌、栄花物語?
【性格】良妻賢母、品がある、高貴、落ち着いている
いかがでしょう。
まず代表作がピンときません。確かに和歌は後世に残っていますが、それは他の三人も同様。そもそも四人とも百人一首に選出されており、歌人としては皆評価されています。(清少納言は和歌に対し苦手意識があったようで、数ではやや劣りますが・・)
また、栄花物語ですが、枕草子や源氏物語と比べると知名度ではやや劣ります。そして何より、栄花物語は赤染衛門の作といった説があるだけで、実際にはよくわかっていません。
そして彼女の性格。確かに一貫性はあるのですが他の三名にくらべ棘がありません。彼女は品のある常識人と言ったイメージであり、良くも悪くもインパクトに欠けます。
これが、僕の赤染衛門の印象です。
赤染衛門の印象が薄い理由
このように、赤染衛門は棘の無い性格で、その代表作もあまり有名ではありません。
と言うか、他の三才女の個性がとんがり過ぎているのですが、この赤染衛門の棘の無い性格が、影の薄い原因なのではないでしょうか。


また、赤染衛門に関する書籍自体が少なく、彼女の情報を拾ってくること自体が困難です。
良妻賢母で常識人の『赤染衛門』。
彼女は、四才女の中で最も普通の女性だったようです・・・。
では、今回はこの辺で!ありがとうございました。