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『清少納言に恋した男』拓麻呂でございます。
平安時代の古典『枕草子』。その作者は清少納言。
この枕草子には、清少納言が気になった山や花、鳥などが列挙された章段があります。
これを『類聚的章段(るいじゅうてきしょうだん)』と言いますが、その中に彼女が気になる『池』を列挙した章段が存在します。
そこには、ちょっと不思議な平安時代のミステリーが記されています。
そのミステリーとは『水無しの池』
池なのに水が無い??
古文? 品詞分解? 歴史的仮名遣い?
そんな専門知識が無くたって『枕草子』は楽しめる!!
清少納言も気になった水無しの池とは何だったのでしょうか?
そして彼女は水無しの池に、どのような感想を持ったのかに迫ってみましょう。
清少納言が気になった池
水無しの池とは
清少納言は『水無しの池』について、以前から疑問を持っていました。と、言うのも彼女はその名称だけ知っていて、実際に見た事は無かったようです。
『池なのに水が無いとは一体どういうことだろう?なんでこんな名前なんだろう?』
不思議に思った彼女は、人に聞いてみました。するとこんな回答が返ってきたのです。
『水無しの池ですか?それはですね、例えば雨の多い五月や、特に例年よりも多く雨が降った年には、この池の水が一滴も無くなってしまうのです。逆に、ひどく日照りが続いた年には、春の始めに水がたくさん湧き出てくるのです』
つまり、『水無しの池』とは、雨が多いと水が干上がり、日照りが続くと水が湧き出る不思議な池だったのです。
清少納言の感想
『水無しの池』が何なのか、ようやく分かった清少納言は、この不思議な池について、どのような感想を持ったのでしょうか?
この感想が、ちょっと変わっていて、清少納言の性格や視点の面白さが顕著に現れているのです。
普通だったら『へぇ~、そんな不思議な池があるんだねぇ、是非見てみたいもんだね』
みたいな感じだと思います。
ところが清少納言は、そんなありきたりな感想を述べるほど甘い女性ではありません。
彼女の感想はこうです。
『いつも水が干上がっているのなら水無しと言われるのも納得できるけど、水が湧き出ることもあるんだから、そんな一方的な名前はおかしいでしょう!ホントに文句を言ってやりたかった!!』
どうですか?普通とはちょっと視点が違っていると思いませんか?
『水無しの池』の不思議な現象には全く触れず、日照りの時に水が湧くのなら『水無し』ではないでしょう!と言ってます。
普通、『水無しの池』の不思議な現象を聞いたら、その現象に注目してしまい、こんな理論的な感想は出てこないと思うんです。
こういう普通と違った視点で物事を感じることが出来るのが清少納言なのです。
そして、そんな清少納言のオモシロ視点がたくさん詰まった古典が枕草子であり、その魅力でもあるのです。
参考:枕草子 三八段『池は』より
類聚的章段『池は・・・』
今回は『水無しの池』に絞って見てきましたが、清少納言は他にも気になる池を列挙しています。
池は、勝間田の池、磐余の池。贄野池は水鳥がたくさん水面に降りていて、その鳥たちが騒がしく飛び立っていく姿がとても面白かったので、ここに挙げておきます。
このように、連想ゲームのような形で、気になる池や山を列挙してく章段が『類聚的章段』です。
類聚的章段は、次から次へと対象物の名称が列挙されていくので、テンポよく読み進められます。そして、時折挿入される彼女の感想などが良いスパイスとなっています。
『春はあけぼの』に目が行きがちな枕草子ですが、このような章段にも目を向けてみると一層枕草子の世界観が伝わってくることと思います。
もっと枕草子の世界を覗いてみたい方は、こちらからお好みの記事をご覧ください。
では、今回はこの辺で!ありがとうございました。