清少納言の枕草子。冒頭(一段)の「春はあけぼの」でとても有名な作品ですが、「春はあけぼの」以外にどんなことが書かれているのかは、意外と知られていません。
この記事では、そんな枕草子の三段「同じことなれども聞き耳異なるもの」をわかりやすくご紹介します。
※枕草子の章段数は底本によって違うため、本記事では比較的入手しやすい「角川ソフィア文庫 新版枕草子」に準拠しています。
枕草子 三段「同じことなれども聞き耳異なるもの」
枕草子の三段は「同じことなれども聞き耳異なるもの」という章段となります。現代の言葉で言い換えると「同じ意味だけど言葉使いが違うもの」といった感じです。
原文は以下の通りです。
法師の言葉。男の言葉。女の言葉。下衆の言葉には必ず文字余りたり
たったこれだけの、清少納言は大きく分けて3つの「同じ意味だけど言葉使いが違うもの」を列挙してます。
現代の言葉に置き換えると以下のようになります。(わかりやすくするため適宜言葉を補っています)
「お坊さんの言葉」。それから「男の言葉」と「女の言葉」。あと、身分の低い者の言葉には必ず余計な一言が付いてきますね・・・。
このように、清少納言は「お坊さんの言葉」、「男性の言葉と女性の言葉」 、「身分の低い者の言葉」といった3つを挙げています。以下より詳しく見て行きましょう。
お坊さんの言葉
清少納言が最初に挙げているのが「法師の言葉」、つまり「お坊さんの言葉」です。
枕草子では「法師の言葉」としか書いていないので言葉足らずでわかりづらいのですが、清少納言が言いたかったのは、
お坊さんは仏教用語や経典の言葉を使うので、一般の人々が使う言葉とは違っている。
ということだと思われます。
男性の言葉と女性の言葉
続いて清少納言は「男性と女性の言葉」も、言葉使いが違うと言っています。これに関しては、現代にも通ずるところがあるのではないでしょうか。
とくに漫画やドラマなど創作物では顕著で、男性は「○○だ」「○○だな」、女性は「○○よ」「○○だわ」といったように語尾が違ったりします。
日常生活で「○○だわ」という言葉使いをする女性はあまり見かけない気もするのですが、女性の言葉使いにはなんとなく柔らかさを感じるケースもありますし、男女の言葉の違いは現代人も理解しやすいのではないでしょうか。
身分の低い者の言葉
最後に挙げているのが「身分の低い者の言葉」です。
清少納言は、
身分の低い者の言葉には必ず余計な一言が付く。
と言っていますが、具体的にどんな言葉が余計だったのかまでは触れていません。おそらく余計な言葉が冗長に聞こえたのでしょう。
枕草子を通読していると、清少納言は身分に厳しい一面を持っていたことがわかります。
今回ご紹介している三段では「身分の低い者の言葉使い」に難癖をつけていますが、他にも「下衆(げす)」という言葉がちょいちょいに出てきて、身分の低い者への嫌悪感を露わにしています。
清少納言が生きていた当時の貴族社会では、階級制度がとても重視されていました。生まれた家のランクによって、将来の身分が決まってしまう時代です。
また、清少納言自身が中~下級貴族の出身だったため、宮廷で働くようになって上流貴族と接するうちに、自分の身分に対する強烈な劣等感を抱くようになってしまったのかもしれません。
また、清少納言は主の定子に非常に気に入られていたことも要因のひとつかもしれません。
これは筆者の想像ですが、自身の身分に対する劣等感があったからこそ、身分の低い者たちへの嫌悪感が生じたのではないかと想像してしまいます。
定子様に気に入られ側近くにお仕えしている私は、もう身分の低いあの人たちとは違うのよ!!
という感じです。
なので、身分に厳しかったのもある意味仕方ないのですが、現代の感覚からすると「もう少しマイルドな言い方があったろうに・・・」と感じてしまうのもまた事実です。
「同じことなれども聞き耳異なるもの」まとめ
以上、枕草子の三段「同じことなれども聞き耳異なるもの」の解説でした。
【原文】
法師の言葉。男の言葉。女の言葉。下衆の言葉には必ず文字余りたり
- お坊さんの言葉
- 男性と女性の言葉
- 身分の低い者の言葉
上記の3つが列挙されたとても短い章段ですが、現代にも通ずるところがあったり、清少納言の人となりが垣間見えたりと、何気に面白い内容です。
また、言葉を大事にするエッセイストとしての清少納言の一面が表れている章段ともいえるのかなと感じています。
他にも、枕草子の各章段や、その他枕草子に関する情報も記事にしていますので、↓コチラ↓からご覧になっていただければと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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